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焦点:イタリア債務問題、ユーロ圏に伝播しない理由
10月18日、今年に入ってからは、イタリア国債の動揺が他のユーロ圏諸国に波及しない構図となっている印象が強い。ローマで5月撮影(2018年 ロイター/Tony Gentile)
[ロンドン 18日 ロイター] - 今年に入ってからは、イタリア国債の動揺が他のユーロ圏諸国に波及しない構図となっている印象が強い。イタリアとスペイン、ポルトガルをひとまとめに扱う投資家の習性が消えつつあるからだ。
これら南欧諸国のどこか1国にトラブルが起きるたびに、混乱の伝播(コンテージョン)を抑える努力をしてきた欧州中央銀行(ECB)の成果であるようにも見えるが、足元でくすぶるイタリアの来年の予算案を巡る問題も、今のところ市場では国内問題だと受け止められている。
2010─12年のユーロ圏危機を経てから何年もの間、イタリアとスペイン、ポルトガルは「周縁国」というくくりで、国債価格は連動してきた。危機の再発のリスクを生むどんな材料が出てきても、比較的信用力の弱いこの3カ国の国債は同じように売りを浴びた。
ところがECBのドラギ総裁がユーロ圏を救うためには「できることは何でもやる」と表明して6年が経過したところでようやく、3カ国の国債価格の連動性が崩れようとしている。
イタリアの財政赤字に関しての大騒ぎや、同国政府と欧州連合(EU)が真っ向から衝突するリスクは、ポルトガルやスペインの国債にほとんど影響を及ぼしていない。このためイタリア国債のスペイン国債に対する利回りのプレミアムは過去20年で最大になった。
ピクテ・ウェルス・マネジメントのグローバル・ストラテジスト、フレデリック・デュクロゼ氏は「周縁国(国債)の相関度は過去最低目前にあり、ここしばらくの期間で初めて、ユーロ圏国債市場のある出来事が、ユーロ圏の枠組み自体の脅威とみなされていないことが非常に鮮明になっている」と述べた。
その理由の1つは、財政懸念が今のところイタリアに限定されていることだ。以前ならどこかの国が抱える固有のリスクでも、南欧国債全般に広がっていた。昨年のスペインのカタルーニャ自治州独立問題などがその例だった。
ただ今回は、イタリアの債務問題が同国のユーロ加盟の是非には影響しないとの市場の確信がより強い。ポピュリズム(大衆迎合主義)的な同国の連立政権も、ユーロ圏離脱には関心がないと懸命に強調してきた。
BNPパリバ・アセット・マネジメントのポートフォリオマネジャー、アルノー・ギョーム・ラミー氏は、ユーロ圏の将来が危うくならない限り、コンテージョンは再燃しないとの見方を示した。
JPモルガン・アセット・マネジメントの債券ポートフォリオマネジャー、イアン・ステーリー氏は、自身が運用に携わるファンドがこのところのイタリアの混乱局面を通じて、スペイン国債を買ったことを明らかにした。
同氏はロイターに「あなたがファンドマネジャーで、イタリア国債を保有したくないなら、スペインとポルトガルが唯一の現実的な代替投資先になる」と語り、特にスペインは近年欧州の成長頭で、大量の失業者を抱えて銀行システムへの懸念が強かった12年ごろとは様相が一変していると付け加えた。
スペインは16年と17年の成長率がユーロ圏のトップだった。またポルトガルも少し前までは大手3社の格付けがそろって投機的水準だったのに、先週のムーディーズの格上げで完全に投資適格級に戻った。昨年の成長率は2.7%で、やはりユーロ圏全般をアウトパフォームしている。
BBVAの金利トレーディング・ストラテジスト、Jaime Costero Denche氏は、スペインとポルトガルの国債の投資家の顔ぶれも変わってきたと指摘。北欧や中東、アジアなど以前には周縁国の国債を買わなかった投資家が姿を見せていると話した。
コンテージョンが起きない大きな理由としては、スペインとポルトガルの銀行が当局の不良債権への取り組みのおかげで、経営状況が改善した点も挙げられる。一方イタリアは不良債権への対応が始まったばかりだ。
(Abhinav Ramnarayan、Ritvik Carvalho記者)