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アングル:イタリア国債、ジャンク級転落は「非現実的」の声
10月8日、イタリア新政権が財政政策を巡り欧州連合(EU)と対立し、同国の利回りが高値を更新している。2013年、ミラノで撮影(2018年 ロイター/Alessandro Garofalo)
[ロンドン 8日 ロイター] - イタリア新政権が財政政策を巡り欧州連合(EU)と対立し、同国の利回りが高値を更新している。折しも2つの主要格付け会社が同国債の格付けを「ジャンク級」の一歩手前まで引き下げることを検討中だが、政治要因や危機の伝播リスクを考えると、ジャンク級への引き下げは非現実的だとの見方も出ている。
ムーデイーズとS&Pグローバルは現在、ジャンク級を2段階上回る格付けをイタリアに付与しているが、10月末に1段階引き下げるとの見方が強い。新政権が発表した多額の財政支出計画が、EUの反発を招いているからだ。
もう1段階下がれば、イタリアは初めて投資適格級を失い、同国債から投資資金が数千億ユーロ単位で逃げ出す恐れがある。
ユーロ加盟国のソブリン債がジャンク級に下がるリスクを見極めるのは難しい。当該国の実績だけでなく、欧州中央銀行(ECB)による債券買い入れプログラム、同プログラムの適格基準、そしてイタリアのユーロ離脱という巨大リスクなど、さまざまな要因を勘案する必要があるからだ。
<市場の織り込み>
イタリア国債とドイツ国債との利回り差は9日時点で312ベーシスポイント(bp)と、5年ぶりの水準まで開いている。これとクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の価格に照らせば、イタリア国債は既にジャンク級発行体として取引されている、との指摘も一部にはある。
ただ、イタリア国債がジャンク級に下がることによる政治的な影響の大きさを考えると、この市場価格は行き過ぎかもしれない、と注意を促す投資家もいる。
米資産運用会社パシフィック・インベストメント・マネジメント・カンパニー(PIMCO)のポートフォリオマネジャー、ニコラ・マイ氏は「ジャンク級に下がればユーロ圏の本格的な危機の引き金になりかねない。だから私は格付け会社が引き下げを見送ると考えている。彼らは欧州危機の犯人になりたくないだろう」と語る。
JPモルガン・アセット・マネジメントの債券ポートフォリオマネジャー、イアイン・スティーリー氏もイタリアをジャンク級に引き下げることについて「極めて重大な決断になるだろう。イタリア国債市場がユーロ圏国債全体の5分の1程度を占めていることを考えただけでもそうだ」と話した。
こうした背景に鑑みれば、他の発行体に比べてイタリアはジャンク級引き下げのハードルが高そうだ。市場が引き下げの可能性を一部しか織り込んでいないのはこのためだ。
ゴールドマン・サックスとバンク・オブ・アメリカ・メリルリンチはそれぞれ先月、ジャンク級への引き下げが完全に織り込まれれば、イタリアとドイツの国債利回り差は400bpまで開くとの試算を示している。
ただ、確率がどれほど低くても、格下げの懸念はくすぶり続けそうだ。アライアンスバーンスタインの債券ポートフォリオマネジャー、ジョン・テーラー氏は「今の連立政権が続く間は、ジャンク級の脅威は去らないだろう」と述べた。
<引き下げの影響>
iBoxx・EUR・ユーロゾーン指数やブルームバーグ/バークレイズ・ユーロ総合指数など欧州の主要債券指数の大半は、ムーディーズ、S&P、フィッチの格付けの平均を基準として採用している。このため、2つの格付け会社がジャンク級に引き下げるだけで、イタリア国債はこれらの指数から除外される。
iBoxx指数を構成する資産は1兆3460億ユーロで、うちイタリア資産は約22%。ブルームバーグ/バークレイズ指数の規模は10兆ユーロ超。
またECBの適格基準では、S&P、ムーディーズ、フィッチ、DBRSの4社すべてがジャンク級とした場合に初めてイタリアは債券買い入れプログラムから除外される。
(Abhinav Ramnarayan記者 Virginia Furness記者)