ニュース速報

ビジネス

アジア経済、貿易摩擦や市場混乱が成長押し下げる可能性=IMF

2018年10月12日(金)13時15分

 10月12日、国際通貨基金(IMF)は、貿易を巡る緊張の長期化によってアジアの経済成長は今後数年で最大0.9%ポイント押し下げられる可能性があるとの見方を示し、アジア諸国の当局者は輸出の落ち込みを補うために市場開放を進める必要があると訴えた。写真はIMFのロゴ。ワシントンで9月撮影(2018年 ロイター/Yuri Gripas)

[ヌサドゥア(インドネシア) 12日 ロイター] - 国際通貨基金(IMF)は12日、貿易を巡る緊張の長期化によってアジアの経済成長は今後数年で最大0.9%ポイント押し下げられる可能性があるとの見方を示し、アジア諸国の当局者は輸出の落ち込みを補うために市場開放を進める必要があると訴えた。

米連邦準備理事会(FRB)や他の主要国中央銀行が予想より速いペースで金融引き締めを行った場合、新興国では市場の混乱が悪化する可能性があるとも警告した

IMFはアジア太平洋地域に関する半年に1度の報告書で「リスク志向の急速な悪化や貿易摩擦の拡大、政策を巡る不透明感も金融状況の引き締まりにつながる可能性がある」と指摘した。

また「資本フローの減少や借り入れコストの上昇を通じてアジアにマイナス影響が波及し、一部の新興国市場で既に見られる混乱が悪化する可能性がある」との見方を示した。

IMFは今年のアジア経済の成長率見通しを5.6%に据え置いた一方、来年については5.4%とし、4月の見通しから0.2%ポイント下方修正。金融市場の緊張や一部の国の金融引き締めに加え、米中間の報復関税措置による影響を理由に挙げた。

米中については、発動または提案済みの関税や新たな関税によって中国は国内総生産(GDP)が最大1.6%、米国はほぼ1%、それぞれ減少する可能性があると指摘した。

中国以外のアジア諸国についても、世界的なバリューチェーンを通じて中国に財を輸出している国が多く、経済が大幅に減速する恐れがあるとした。

その上で、これら全ての要因を踏まえると、アジアの経済成長は向こう2年ほどで最大0.9%ポイント押し下げられる可能性があるとし、「貿易を巡る緊張の長期化によって信頼感が一段と損なわれ、金融市場に害が及ぶほか、サプライチェーンに混乱が生じ、投資や貿易が抑制される可能性がある」と警告した。

こうした影響の大部分は、 短期的な刺激策によって相殺される可能性が高いものの、アジアの当局者は自国の市場開放を進めることでも打撃を緩和できると指摘。「勝者と敗者が出てくる。そうした改革の実行は困難で時間を要するが、総合的な恩恵は大きなものになる」として対応を促した。

*内容を追加しました。

ロイター
Copyright (C) 2018 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ユーロ圏経常収支、2月は調整後で黒字縮小 貿易黒字

ビジネス

ECB、6月利下げの可能性を「非常に明確」に示唆=

ビジネス

IMFが貸付政策改革、債務交渉中でも危機国支援へ

ワールド

米国務長官が近く訪中へ、「歓迎」と中国外務省
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画って必要なの?

  • 3

    【画像】【動画】ヨルダン王室が人類を救う? 慈悲深くも「勇ましい」空軍のサルマ王女

  • 4

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 5

    パリ五輪は、オリンピックの歴史上最悪の悲劇「1972…

  • 6

    人類史上最速の人口減少国・韓国...状況を好転させる…

  • 7

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 8

    ヨルダン王女、イランの無人機5機を撃墜して人類への…

  • 9

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 10

    アメリカ製ドローンはウクライナで役に立たなかった

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 7

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 8

    「もしカップメンだけで生活したら...」生物学者と料…

  • 9

    温泉じゃなく銭湯! 外国人も魅了する銭湯という日本…

  • 10

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    巨匠コンビによる「戦争観が古すぎる」ドラマ『マス…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中