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財政悪化懸念のイタリア、ECB支援はEU救済が前提=関係筋
10月11日、イタリアの政府や銀行の資金繰りが危うくなったとしても、欧州中央銀行(ECB)は、同国がEUの救済措置を確保しない限り、支援に動くことはないと複数のECB関係者は指摘している。写真はECBのロゴ。フランクフルトで4月撮影(2018年 ロイター/Kai Pfaffenbach)
[ヌサドゥア(インドネシア) 11日 ロイター] - イタリアの政府や銀行の資金繰りが危うくなったとしても、欧州中央銀行(ECB)は、同国が欧州連合(EU)の救済措置を確保しない限り、支援に動くことはないと複数のECB関係者は指摘している。
イタリアの新政権が先月、財政赤字を拡大させる計画を示したことから、膨れ上がる公的債務への懸念が高まり、イタリア国債の利回りは急上昇している。
インドネシアで開催されている経済サミットに参加している複数の関係者は、イタリア政府が方針転換すれば債務危機を回避できる可能性があると指摘。ただ、イタリアは投資家懸念の払しょくや国内銀行支援でECBに期待すべきでないと説明した。
EUルールが、金融支援の条件として緊縮財政や痛みを伴う経済改革を実施する救済「プログラム」に加盟国が同意しない限り、ECBによる救済を禁じているためだ。ただ、イタリア政府は、緊縮財政や痛みを伴う改革は断固として拒否している。
ルールに反する動きは、ECBの信頼を回復が不可能なほどに損ない、ドイツなどユーロ圏内の債権国の反発を招く。
関係者の1人は「ユーロ圏のメカニズムがどのように機能するかを示すケースになる」と指摘した。
<国内銀行が危機の引火点に>
複数の関係者によると、3750億ユーロ(4350億ドル)のイタリア国債を抱える国内銀行が危機の引火点になる可能性がある。
国内銀行は、保有国債を担保に、2500億ユーロの長期借り入れも含め、ECBから融資を受けている。
イタリア国債が投資適格級の格付けを失えば、保有国債はECBの定期借り入れ担保として不適格となり、ECBの債券買い入れプログラムの対象からも外される。
代わりの担保がなく資金繰りが危うくなった場合、銀行はイタリア中銀に緊急流動性支援(ELA)を申請することになる。
関係筋は、イタリアの一部の銀行は健全で、そのため全ての銀行がELAを申請することにはならないと指摘している。
一方、ELAに過度に依存すれば制約も出てくる。
ECBは、健全性の疑われる銀行への延命支援と判断した場合、ELAの停止命令を出せる。
2015年の夏にギリシャのチプラス政権が救済プログラムへの合意を拒否した時、ECBはギリシャの国内銀行向けELAを凍結した。これを受け、ギリシャ政府は国内銀行の閉鎖を余儀なくされた。
別の関係者は「国外への持ち出しが見込まれるような資金を銀行に提供するつもりはない」と語った。
そもそも、こうした状況になる前に、預金者と貸し手は格下げとそれに伴う流動性危機を警戒して、イタリアの銀行とのつながりを断ち切るかもしれない、と関係者は指摘する。
ECBが推奨する格付け機関4社のうち、3社がイタリア国債を投機的(ジャンク)等級を2段階上回る水準に格付けしている。残り1社のDBRSはジャンク等級を3段階上回る水準としている。
ムーディーズとS&Pグローバル・レーティングは10月下旬頃にイタリア国債の格付けを見直すが、アナリストは1段階程度の格下げは既に織り込まれていると指摘する。