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焦点:中国の株価対策は限定的か、貿易戦争による一段安を懸念
6月27日、米中両国が全面的な貿易戦争に突入するのではないかとの懸念がくすぶり続けているが、中国政府は足元の株式市場の動揺が、国民の政策に対する反感を招く事態を心配している。写真は2017年5月撮影(2018年 ロイター/Thomas White)
[上海/北京 27日 ロイター] - 米中両国が全面的な貿易戦争に突入するのではないかとの懸念がくすぶり続けているが、中国政府にはより目先的な心配がある。それはこうした懸念に起因する足元の株式市場の動揺が、国民の政策に対する反感を招く事態だ。
中国株式市場は、政府が数年来続けてきた債務圧縮の取り組みが企業の借り入れコストを押し上げ、景気減速をもたらしたことによって、既に低迷している。
その株安が今後制御不能となり、人民元の値下がりが長期化する展開になれば、米国との通商摩擦で守りを固めようとする政府は痛手を受けかねない。
ただ政策立案関係者や投資家、エコノミストの話を総合すると、一段の大幅な株安が起きても、政府が行使できる対応策は非常に限られてしまう。債務圧縮の取り組みが足かせとなる上に、本格的な金融緩和に動けば資金の国外流出を招く恐れがあるからだ。
中国当局は何としても2015年の政策的な失敗を繰り返したくはないと願っている。当時、新規上場差し止めや思い切った緩和などを通じて株価を支えようとしたが失敗。投資家の不安を鎮められず、人民元の切り下げもあって上海株は40%強下落した。
今の局面で中国は、貿易紛争を金融市場にまで持ち込むことになる人民元切り下げや保有米国債の売却は回避しようとするだろう、と複数の政策立案関係者は話す。
となれば経済を支援する上で残された手段は、銀行預金準備率の引き下げといった的を絞った政策措置しかないが、こうした方法はこれまでのところ株安を止める効果は乏しい。
<的を絞った緩和>
人民銀行(中央銀行)が今年3回目の預金準備率引き下げを実施してから2日後の26日、上海総合指数は1月の高値からの下落率が20%を超えて、弱気相場の局面に入った。
27日には貿易戦争懸念や人民元安を嫌気してさらに1.1%下落。有力企業300銘柄で構成するCSI300指数も2.1%安となり、弱気相場の基準に迫ってきた。
一方で人民銀の易綱総裁は、中国の投資家に平静さを保つよう呼びかけた。中原銀行のチーフエコノミスト、ワン・ジュン氏は、易綱氏の行動からは人民銀が「市場の期待を積極的に管理しようとしている」様子がうかがえると述べた。
このためエコノミストの間では、今年後半に貿易紛争を巡る逆風が強まるようなら、追加的な的を絞った緩和策が実施される公算が大きいとの予想が出ている。人民銀は、定例の公開市場操作(オペ)を通じて銀行システムに流動性をより多く供給することもできる。
もっともより幅広い金融緩和がなお選択肢として許容されない中で、そうした的を絞った緩和策が市場心理の悪化を食い止められるかどうか疑問は残る。
レイトン・キャピタルのパートナー、ユン・ジオン氏は「貿易戦争は中国の輸出を圧迫し、人民元安を促すかもしれない。だから人民銀は利下げできない」と話した。
<内需拡大に視線>
中国は市場の不安を和らげるために、輸出の落ち込みを穴埋めするべく内需を促進する政策を打ち出してもおかしくない。
複数の政策立案関係者によると、財政赤字の年間目標を引き上げることや、減税などを通じて個人消費と投資拡大を目指すことが想定できるという。
4月には共産党政治局が、昨年12月にいったん削除した「内需拡大」の文言を政策声明に復活させている。
そのほか中国は企業が海外市場から国内市場に事業基盤を転換するのを金融面で後押しする可能性もある。
ある政策立案関係者は「われわれは米国市場の代わりに他の市場を開拓するべきだ」と語った。それでも内需拡大に向けた対策はどれも短期間では成功が覚束ないとくぎを刺し、「市場の切り替えには時間が必要になる」と付け加えた。
別の政策立案関係者は、最後の手段としては人民元切り下げが使えるとしながらも「自滅につながりかねず、決して安易には行使できない」と慎重な姿勢を示した。
(Andrew Galbraith、Kevin Yao記者)