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貿易戦争の影響、ECB当局者は表向き以上に懸念=関係筋
6月20日、米国と主要貿易相手国との間で貿易戦争のリスクが高まる中、欧州中央銀行(ECB)当局者は表面上、楽観的な見方を示しているものの、実際にはこうしたリスクがユーロ圏の景気回復を妨げ、金融緩和の出口戦略を複雑にしかねないとの懸念を強めている。写真はECB本部。フランクフルトで昨年7月撮影(2018年 ロイター/Ralph Orlowski)
[シントラ(ポルトガル) 20日 ロイター] - 米国と主要貿易相手国との間で貿易戦争のリスクが高まる中、欧州中央銀行(ECB)当局者は表面上、楽観的な見方を示しているものの、実際にはこうしたリスクがユーロ圏の景気回復を妨げ、金融緩和の出口戦略を複雑にしかねないとの懸念を強めている。中銀関係筋が明らかにした。
ECBは先週の理事会で量的緩和の年内終了を発表し、当地で今週開かれたECB年次フォーラムも落ち着いた雰囲気で行われた。
ただ、当局者との会話では、米国が主要貿易相手国に仕掛ける貿易戦争への懸念が高まる中、経済やECBの政策軌道に先行き不透明感が漂いつつあることが示唆された。
関係筋の1人は「保護主義は現時点で想定されているより大きな影響を及ぼす」との見方を示し、「ECBの緩和縮小もリスクだ。(保護主義の影響は)完全に織り込まれておらず、市場はある日、目を覚ますことになる」と述べた。
ECBはコメントを控えている。
ECB理事会メンバーのレーン・アイルランド中銀総裁は19日、大規模な経済的衝撃が発生しない限り、量的緩和の年内終了が覆されることはないとの認識を示した。
だが、ドラギECB総裁は年次フォーラムで19日に行った講演で、「利上げ時期の決定については忍耐強さを保ち、その後の政策調整は段階的に行う」と強調した。
ユーロ圏の景気先行指標が予想を下回る中、一部関係筋の間では欧州経済がECBスタッフ予想より悪化するとの見方も出ており、関係筋の1人は「スタッフ予想はうわべの楽観的な見通しだ」と語った。
ECBが先週公表したスタッフ予想では向こう3年間の景気減速を見込んでおり、成長率は今年が2.1%、来年は1.9%、2020年は1.7%と予想している。
このスタッフ予想についてドラギ総裁は先週、まだ発動されていない貿易措置の影響は反映されていないと強調した。予想確定日より後に発動された米国の鉄鋼・アルミニウム関税を念頭に置いていた可能性が高い。
米国の関税は今のところ、比較的狭い範囲の製品に限られているが、報復合戦に発展すれば本格的な貿易戦争に突入しかねない。そうなれば 欧州経済が減速するほか、ユーロ相場も不安定になり、イタリアやギリシャ、ポルトガルなど比較的競争力の低い国に痛手となる可能性がある。