ニュース速報

ビジネス

貿易戦争の影響、ECB当局者は表向き以上に懸念=関係筋

2018年06月21日(木)12時28分

 6月20日、米国と主要貿易相手国との間で貿易戦争のリスクが高まる中、欧州中央銀行(ECB)当局者は表面上、楽観的な見方を示しているものの、実際にはこうしたリスクがユーロ圏の景気回復を妨げ、金融緩和の出口戦略を複雑にしかねないとの懸念を強めている。写真はECB本部。フランクフルトで昨年7月撮影(2018年 ロイター/Ralph Orlowski)

[シントラ(ポルトガル) 20日 ロイター] - 米国と主要貿易相手国との間で貿易戦争のリスクが高まる中、欧州中央銀行(ECB)当局者は表面上、楽観的な見方を示しているものの、実際にはこうしたリスクがユーロ圏の景気回復を妨げ、金融緩和の出口戦略を複雑にしかねないとの懸念を強めている。中銀関係筋が明らかにした。

ECBは先週の理事会で量的緩和の年内終了を発表し、当地で今週開かれたECB年次フォーラムも落ち着いた雰囲気で行われた。

ただ、当局者との会話では、米国が主要貿易相手国に仕掛ける貿易戦争への懸念が高まる中、経済やECBの政策軌道に先行き不透明感が漂いつつあることが示唆された。

関係筋の1人は「保護主義は現時点で想定されているより大きな影響を及ぼす」との見方を示し、「ECBの緩和縮小もリスクだ。(保護主義の影響は)完全に織り込まれておらず、市場はある日、目を覚ますことになる」と述べた。

ECBはコメントを控えている。

ECB理事会メンバーのレーン・アイルランド中銀総裁は19日、大規模な経済的衝撃が発生しない限り、量的緩和の年内終了が覆されることはないとの認識を示した。

だが、ドラギECB総裁は年次フォーラムで19日に行った講演で、「利上げ時期の決定については忍耐強さを保ち、その後の政策調整は段階的に行う」と強調した。

ユーロ圏の景気先行指標が予想を下回る中、一部関係筋の間では欧州経済がECBスタッフ予想より悪化するとの見方も出ており、関係筋の1人は「スタッフ予想はうわべの楽観的な見通しだ」と語った。

ECBが先週公表したスタッフ予想では向こう3年間の景気減速を見込んでおり、成長率は今年が2.1%、来年は1.9%、2020年は1.7%と予想している。

このスタッフ予想についてドラギ総裁は先週、まだ発動されていない貿易措置の影響は反映されていないと強調した。予想確定日より後に発動された米国の鉄鋼・アルミニウム関税を念頭に置いていた可能性が高い。

米国の関税は今のところ、比較的狭い範囲の製品に限られているが、報復合戦に発展すれば本格的な貿易戦争に突入しかねない。そうなれば 欧州経済が減速するほか、ユーロ相場も不安定になり、イタリアやギリシャ、ポルトガルなど比較的競争力の低い国に痛手となる可能性がある。

ロイター
Copyright (C) 2018 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ロイターネクスト:米第1四半期GDPは上方修正の可

ワールド

バイデン氏、半導体大手マイクロンへの補助金発表 最

ビジネス

米国株式市場=下落、予想下回るGDPが圧迫

ワールド

中国の対ロ支援、西側諸国との関係閉ざす=NATO事
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 3

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP非アイドル系の来日公演

  • 4

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 5

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 6

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 7

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    やっと本気を出した米英から追加支援でウクライナに…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中