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物価下振れリスクに注意、目標達成期限は設けてない=布野日銀委員
6月21日、日銀の布野幸利審議委員(写真)は、仙台市で講演し、物価の先行きは下振れリスクが大きく、注意が必要との認識を示した。写真は都内で2015年7月撮影(2018年 ロイター/Toru Hanai)
[仙台市 21日 ロイター] - 日銀の布野幸利審議委員は21日、仙台市で講演し、物価の先行きは下振れリスクが大きく、注意が必要との認識を示した。金融政策運営は物価2%目標の達成期限を設けて「単純に物価の上昇を目指しているわけではない」とし、現在の金融緩和を粘り強く続けていく考えを示した。
布野委員は物価動向について、景気拡大が続いている一方で「企業の賃金・価格設定スタンスがなお慎重なものにとどまっていることなどから、物価は弱めの動きを続けている」と指摘。先行きも「中長期的な予想物価上昇率の動向を中心に下振れリスクが大きく、注意が必要だ」との認識を示した。
具体的には、差別化が難しい財・サービスで競争が一段と厳しくなった場合、「需給ギャップがプラス幅を拡大させても、これらの物価上昇率は高まらない可能性がある」ことなどを指摘した。
そのうえで、金融政策運営は「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資すること」が重要とし、物価2%目標に「具体的な期限を設けて、単純に物価の上昇を目指しているわけではない」と説明。2%の物価安定が実現するもとで「所得から支出への好循環が働く経済を目指している」と強調した。
他方、大規模緩和の長期化に伴う金融面の副作用に関しては「これまでのところ、資産市場や金融機関行動において過度な期待の強気化を示す動きは観察されていない」とし、金融機関の収益圧迫に伴う金融仲介機能の停滞リスクについても「現時点では金融機関が充実した資本基盤を備えていることなどから、そのリスクも大きくない」との認識を示した。
これらを踏まえた先行きの金融政策について、物価2%目標に向けたモメンタムは「維持されている」ものの、「実現までにはなお距離がある」と述べ、現在の「強力な金融緩和を粘り強く推進していくことが必要」と語った。
また、日本経済は需給ギャップのプラス幅が拡大し、労働・資本の両面でひっ迫感が強まっている中で「幅広い主体による構造改革や成長戦略の取り組みが進んでいる」とし、こうした取り組みの推進によって成長力も高まると主張。
成長力を高めることは「時間がかかる」との認識を示し、「金融政策が総需要を喚起して、適度にタイトな需給環境が維持される中で、活発な需要がさまざまな取り組みの進展を促す好循環を長期にわたり持続させなければならない」と訴えた。
(伊藤純夫)