ニュース速報

ビジネス

ロイター企業調査:賃上げ加速せず、春闘で直近ピーク超え3割弱

2018年06月21日(木)10時41分

6月21日、6月のロイター企業調査によると、今年の春闘賃上げ率が最近のピークだった2015年を上回る企業は28%となり、3割に届かなかった。写真は都内の横断歩道を渡る人たち。2015年3月撮影(2018年 ロイター/Yuya Shino)

[東京 21日 ロイター] - 6月のロイター企業調査によると、今年の春闘賃上げ率が最近のピークだった2015年を上回る企業は28%となり、3割に届かなかった。人手不足は深刻化しているものの、人材確保を理由とした賃上げはさほど広がりを見せていない。

「15年とほぼ同じ」が63%、「下回る」が9%となり、企業は人手不足だからといって必ずしも賃上げで対応すべきとは捉えていない。

この調査は、ロイターが資本金10億円以上の日本の中堅・大企業539社に調査票を発送。6月4日─15日に実施。回答社数は223社程度。

連合が集計している春闘の賃上げ率(定期昇給とベースアップ)は2015年が2.20%と最近では最も高かった。今年は6月11日までの集計で2.08%。交渉最終段階で15年を上回るのは難しい状況だ。

ロイター調査の結果から業種別の動きをみると、賃上げ率について、卸売で60%、運輸で48%、鉄鋼・非鉄では38%の企業が15年を上回ると回答。景況感の良い業種や人材確保の問題が深刻化している業種では積極的な姿勢がうかがえる。

「新卒採用の人数確保が難しくなっており、就職希望者の増員を狙う」(鉄鋼)、「初任給引き上げに連動して若年層賃金の見直しを行った」(卸売)など、若手の人員確保を狙った動きがある。

他方、15年と同じ、ないし下回る企業では「人手不足と結び付けて短期的な賃上げを考えているわけではない」(化学)などと、必ずしも賃上げに直結しないという考え方も示された。

「生産性向上や機械化などで人手不足に対応している」(繊維)、「人材派遣や中途入社を増やして対応」(運輸)、「人手不足の問題は量より質の面が大きく、賃上げで解決できる範囲は知れている」(機械)などの指摘がある。

また賃上げの原則として「物価連動が基本」(輸送用機器)、「賞与で十分手当している」(卸売)などとしている企業もある。

労働力人口の減少に伴って雇用のひっ迫状況は強まっており、それが賃上げの原動力となっている企業も4分の1程度はあるが、大半の企業では人手不足と賃上げの関連性はそこまで強くはなさそうだ。

(中川泉 編集:石田仁志 )

ロイター
Copyright (C) 2018 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国GDP、第1四半期は前期比+1.3%で予想上回

ビジネス

日経平均は反落で寄り付く、米金利高止まりを警戒

ワールド

メキシコ大統領選、与党シェインバウム氏が支持リード

ワールド

ウクライナ、国外在住男性のパスポート申請制限 兵員
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 7

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 10

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 7

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中