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焦点:ミレニアルに続く「Z世代」に照準、米企業が戦略再構築

2018年06月17日(日)11時31分

 6月12日、米消費関連企業の間で、いわゆる「ミレニアル世代」に続く「Z世代」に目を向ける動きが出てきた。写真はサンディエゴのターゲットストア。2016年撮影(2018年 ロイター/Mike Blake)

[ニューヨーク 12日 ロイター] - 米消費関連企業の間で、いわゆる「ミレニアル世代」に続く「Z世代」に目を向ける動きが出てきた。Z世代をうまく購買層に取り込めそうな企業を物色する投資家も登場している。

1981─96年に生まれたミレニアム世代に対して、Z世代は97年以降出生の6800万人を指す。Z世代は、他のどの年齢層よりも多様性があり、ネットフリックスなど携帯端末経由のストリーミングサービスになじんでいてテレビコマーシャル(CM)とは無縁なだけに、企業としても商品やサービスをアピールするには、販売戦略や関連技術の再構築を進めているところだ。

調査会社ミンテルの試算では、Z世代だけで年間支出額は440億ドルに上るほか、家計ベースでさらに6000億ドルの支出に影響を及ぼしている。

こうした中でアバクロンビー・アンド・フィッチは、衣料ブランド宣伝のためにテレビCMを流す代わりにユーチューブでネット上の有名人による独自番組の放送を開始。ピザ宅配チェーンのパパ・ジョーンズ・インターナショナルは、先行するドミノ・ピザに肉薄するために電話が嫌いなZ世代に狙いを定め、オンライン注文システムへの投資を増やしつつある。

スミード・キャピタルのポートフォリオマネジャー、ビル・スミード氏は「ブランドの好みは終生変わらない傾向があり、将来の顧客に訴えかけるテーマを探り当てようとする企業が増えている」と話す。

その上で同氏は、Z世代へのマーケティングに成功した点を理由の1つに挙げて、アメリカン・エキスプレスとディスカバリーなどの株を保有している。

ピュー・リサーチによると、来年にはミレニアム世代とZ世代の合計が人口集団として最大規模になる。

両世代ともに自宅にコンピューターが常に存在する環境で育ったとはいえ違いもある。Z世代からすると、2001年9月11日の米中枢同時攻撃当時はまだ記憶がないほど幼く、アップルが最初のiPhone(アイフォーン)を発売した際でもまだ10歳以下で、インターネット接続の主な手段はもはやモバイル端末となっている。

こうした特性が販売側にとって特別な課題となる、と指摘するのは南カリフォルニア州大学のステファン・ポラック教授(広告報道)だ。「ミレニアル世代もモバイル端末を使うが、彼らは従来の販売チャネルやメッセージにも反応してくれる」という。

その結果としてZ世代に直接軸足を置く企業は、マーケティング手法を変えざるを得なくなった。大学生向け住宅を開発・管理するエデュケーション・リアルティー・トラストは、アラバマ州タスカルーサなどの地域で販売活動予算を19%増やすとともに、深刻な景気後退期に成長した世代の学生に対して豪華さより値ごろ感に重点を置いた売り込みを行っている。

同社のクリスティン・リチャーズ最高執行責任者(COO)は「われわれの顧客はミレニアル世代からZ世代に交代しているので、販売戦略を修正した」と説明した。

コロンビア・スレッドニードル・インベストメンツのシニア・ポートフォリオマネジャー、マシュー・リトフィン氏は、中小企業のアプリを大手並みに強化するサービスを提供しているQ2ホールディングスやマインドボディといったソフトウエア企業への投資を拡大している。

リトフィン氏は「今はゲーム世代でだれかと会話するのを好まない。もし日々の商売をモバイル端末のゲームのように仕上げられるなら、この世代の『食いつき』は良くなる」と述べ、ドミノ・ピザがいち早くオンライン注文に投資して今や売上高の6割強を占める状態になった事例を示した。

同氏によると、その企業がモバイル端末用アプリに関してどんな計画を持っているかが、コロンビアにとって投資先にするかどうか判断する1つの基準になりつつあるという。

(David Randall記者)

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