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アングル:中国が約束した米国製品輸入増、ボトルネックは何か
5月21日、米国の巨大貿易赤字を削減し、世界の2大経済大国による貿易戦争拡大を回避するため、中国は米国製品の輸入を増やすことを約束した。米国側は、エネルギー資源やコモディティを念頭に置いている。オクラホマ州の原油貯蔵施設で2016年3月撮影(2018年 ロイター/Nick Oxford)
Florence Tan and Dominique Patton
[シンガポール/北京 21日 ロイター] - 米国の巨大貿易赤字を削減し、世界の2大経済大国による貿易戦争拡大を回避するため、中国は米国製品の輸入を増やすことを約束した。米国側は、エネルギー資源やコモディティを念頭に置いている。
両政府が関税措置を停止し、より広範な合意を目指すことで合意したことを受けて、米中貿易戦争は一旦「保留」にすると、ムニューシン米財務長官は20日述べた。米政府は、生産が増加傾向にある原油とガスの輸出拡大にとりわけ大きな関心を持っている。
しかし、インフラ上のボトルネックによって、エネルギー資源やコモディティの輸出増加ペースは緩慢なものにとどまるだろう。しかも、米国のガスや原油、その他の製品が世界市場における価格競争力を維持し続ける限りにおいて、という前提条件付きだ。
中国による米国製品の輸入額が6000億ドル(67兆円)増加して9000億ドルに達するまでには、最長3年かかるとモルガン・スタンレーは試算している。また、短期的には農産品の輸入が増加し、その後エネルギー資源の輸入増が続くと予測している。
<原油とガス>
米国の中国向け原油・ガス輸出は、2017年の平均価格換算で43億ドル相当となり、貿易赤字削減目標の2000ドルには遠く届かない。だが、米国の原油輸出は増えており、2018年の第1四半期には20億ドル分が中国に輸出された。
米国産原油の購入を増やすことで、中国は、米国の制裁再発動によるイランからの原油輸入減少を補うことが期待できる。
「米国産原油を買うことで、イラン情勢の埋め合わせができる。バイヤーがイラン産原油の削減を見込む中で、米国から追加供給を受けることができる」と、コンサルタント会社エナジー・アスペクツのマイケル・メイダン氏は言う。
中国の米国産原油輸入は、今年の下期には日量30万ー40万バレル(bpd)にまで増え、年間輸入額が90ー110億ドルに達する可能性がある、と同社は予想している。
だがそれは、中国が必要とする輸入需要のほんの一部にすぎない。中国は4月だけで200億ドルに相当する960万bpdの原油を輸入している。
また、米国からの輸出が多少増加したとしても、現状ではインフラのボトルネックが大幅な増加を妨げるだろう。
米国の原油輸出ターミナルは、世界水準と比べ小規模な上に、超大型原油タンカー(VLCC)はパナマ運河を通過できない。アフリカ大陸を迂回しなければならず、中東やアフリカ、欧州からの原油と比較してコスト面で不利な状況を生んでいる。
米政府はまた、液化天然ガス(LNG)の中国輸出を増やしたい考えだ。中国は2017年、韓国を抜き、日本に次ぐLNG輸入大国になった。中国は、石炭使用を減らして公害を軽減するため、低コストのエネルギー源を探している。
LNG輸出は増加しているものの、米国で稼働中の輸出施設は2カ所しかなく、双方のLNG供給は、ほぼすべて契約済みだ。また中国側にもパイプラインやターミナルの容量面で制約がある。
さらなる液化施設5カ所が、米国で建設中だ。
もし中国企業が、まだ開発段階で顧客や資金を必要としている米LNG輸出プロジェクトのパートナーになれば、米国から中国へのLNG輸出は急増するだろう。
「少なくとも、米国LNG輸出の13%が中国に向かっている。中国がガスのインフラ施設を拡充し、米国企業と長期契約を結ぶ中国バイヤーが増えるにつれ、この数字は膨らむだろう」と、米調査会社ジェンスケープのLNGアナリスト、チャーリー・コーン氏は予想する。
<農産品>
中国は、国有の大豆製品会社に、米国産余剰大豆の購入増加を指示できると、米国大豆輸出協会の北米地域ディレクター、ポール・バーク氏は言う。
そうなれば、今年の米国産大豆輸入は140万トン、金額で60億ドル相当増加できるだろう。代わりに、主要輸出国であるブラジルとアルゼンチンからの輸入が大きく減ることになる。
大豆は、米国の中国向け輸出品全体の中で2番目に金額が大きく、昨年は120億ドル分が輸出されている。
また、中国が遺伝子組み換えトウモロコシの輸入手続き規制を緩和し、低関税輸入枠のすべてを小麦に振り分ければ、穀物輸出はさらに増加するだろう。
一方、鶏肉や牛肉、豚肉の輸入拡大は、貿易を増加させる1つの方法ではあるが、中国政府が大きな譲歩を見せない限り、厳しい輸入規制によってそのボリュームは限定されるとアナリストは指摘する。
中国政府は2月、米国産鶏肉に対する反ダンピング税を8年ぶりに撤回したが、鳥インフルエンザを理由とした禁輸措置は残っている。この禁輸措置がなければ、米中の鶏肉貿易は最大6億ドル規模になる可能性があると、業界専門家は予測する。
中国は過去に、戦略備蓄用に大量の米国産豚肉を購入したことがある。また、同国の中間所得層を中心に、輸入肉には大きな需要がある。
だが中国は、米国の養豚業で広く使われているラクトパミンなどの成長促進剤や、米国産牛肉に使われる合成ホルモンを一切認めていない。
中国政府は昨年、14年間続いた米国産牛肉の禁輸を解除したが、輸入を認めたのは、限られた米牛肉加工業者が扱う牛肉のみだった。
今年の第1・四半期に中国が輸入した牛肉に占める米国産の割合は1%未満だった。この割合が膨らめば、豪州産やブラジル産、ウルグアイ産が圧迫されることになる。
「大口の肉の買い付けと輸出は、調整に時間がかかる。蛇口をひねるような訳にいかない」と、業界関係者は話した。
(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)