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アングル:原油高に苦しむ米航空株、割安感と旅行需要で反発も

2018年05月25日(金)12時44分

 5月21日、米航空株は今年、原油高に圧迫される形で下落。しかし株価に割安感が生まれ、夏の旅行シーズンの需要が過去最高と予想されることから、反発に向かう態勢が整っている可能性も。写真は1月、ボストンの国際空港(2018年 ロイター/Brian Snyder)

[ニューヨーク 21日 ロイター] - 米航空株は今年、原油高に圧迫される形で下落している。しかし株価に割安感が生まれ、夏の旅行シーズンの需要が過去最高と予想されることから、反発に向かう態勢が整っている可能性もある。

S&Pの航空株指数は3月半ば以降だけで10%強も下がった。この間、株式市場全体が不安定だったことなどの要因もあるが、米WTI原油価格が18%上がって1バレル=70ドルを突破したのと軌を一にしている。

燃料は航空会社にとって最も負担の重い費用の1つで、アナリストの分析では一般的に営業費用の3分の1前後に上る。CFRAリサーチで航空株をカバーするアナリスト、ジム・コリドー氏は「投資家は1年中原油価格を気にかけている」と指摘した。

トムソン・ロイターのデータによると、過去50営業日を通して航空株指数と原油価格は強い逆相関の関係が見て取れる。つまり原油が値上がりすれば、航空株は下がる。この2年という期間で、この逆相関度が最も高くなっているという。

スタイフェルのアナリスト、ジョセフ・デナルディ氏は「将来原油価格が安定すれば、この逆相関は解消されるだろう。しかし原油のこの先の方向についてはまだ相当不確実性がある」と述べた。

トラック輸送や鉄道、貨物配送といった他の運輸関連企業は、容易に燃料サーチャージを導入できるため、航空会社よりも原油高で受ける打撃は小さい、と話すのはモーニングスターのアナリスト、キース・シューメーカー氏だ。

足元までの値下がりで航空株の値ごろ感が増しているのは間違いない。トムソン・ロイター・データストリームによると、S&P総合500種に入っている5社、デルタ航空とユナイテッド・コンチネンタル・ホールディングス、アメリカン航空グループ、サウスウエスト航空、アラスカ航空グループは、グループ全体として予想利益に基づく株価収益率(PER)が約8.4倍と、2016年終盤以来の低水準にある。

予想利益に基づくPERを比較すると、これら5社のS&P総合500種に対するディスカウント率は49%近くで、過去5年間の平均ディスカウント率は39.5%だ。

ホライズン・インベストメント・サービシズのチャック・カールソン最高経営責任者(CEO)は「グループとしてかなりの値ごろ感がある」と強調した。同社はサウスウエスト航空とスカイ・ウエストの株式を保有している。

航空会社にとっては、今後運航便数の調整を迫られるようになれば原油高もプラスに働く、とデナルディ氏はみている。今年になって過大な輸送能力と価格競争が投資家の動揺を誘っていたからだ。

デナルディ氏は「市場と投資家はずっと、航空会社が輸送能力を削減して原油高に対応することを望んできた。今のところまだそうした段階に達していない」と語った。

デルタ航空のジェイコブソン最高財務責任者(CFO)は先週の投資家との会合で輸送能力を減らすかどうか問われると、この夏の旅客数見込みが過去最高になりそうな点を挙げて、輸送能力を削減するとしても夏が終わってからになるとの見方を示した。

実際、CFRAのコリドー氏にとっては、夏場の旅行需要の強さこそが、航空株が反発に転じる態勢にあると考える根拠の1つになっている。

ロイター
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