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現在の適度な経済維持すべき、無理は「無用な振幅」=桜井日銀委員
5月24日、日銀の桜井真審議委員は、群馬県前橋市内での講演で、日本経済の需要が拡大する一方、人手不足など供給政策も意識される中、先行きの金融政策運営は需要と供給のバランスが大きく崩れることがないよう注意し、最適な政策を検討していくことが重要との見解を示した。写真は都内で2016年9月撮影(2018年 ロイター/Toru Hanai)
[前橋市 24日 ロイター] - 日銀の桜井真審議委員は24日、群馬県前橋市内での講演で、先行きの金融政策運営は現在の適度な需給バランスの維持を目指すべきとし、景気重視の姿勢をにじませた。無理な政策運営でバランスが崩れれば、無用な経済の振幅を招くとも警告した。
桜井委員は先行きの金融政策運営について「当面は現行の枠組の下で、粘り強く緩和的な金融環境の維持に取り組むことが適当」としたうえで、金融政策を運営していく上での留意点として、需給バランスと金融仲介機能を挙げた。
労働需給が逼迫する中、企業が取り組んでいる省力化投資や非効率なビジネス・プロセスの見直しは供給面の拡大につながっているものの、こうした動きは「やや長い目でみれば、いずれ減速する可能性がある」と指摘。
一方、現行の日銀によるイールドカーブ・コントロール(YCC)政策は予想物価上昇率や経済の成長力が高まるにつれて「緩和効果を増幅する仕組みを内包している」とし、「先行きは供給面の拡大ペースの減速や、金融面からの需要刺激効果の強まりに伴い、需要と供給のバランスに変化が生じる可能性がある」と見通した。
このため「需給のバランスが極端に偏った状況が放置されると、無用に経済の振幅を拡大する恐れがある」とし、金融政策は「現在のような、適度に需給の引き締まった状態を長く維持することを目指すべき」と主張。
日銀が「なりふり構わず、やみくもに」物価2%目標を目指して「需要の増加ペースを速めれば、供給制約が強まり物価が大きく上昇するかもしれない」と物価押し上げに作用するとしながらも、それによって経済の振幅が大きくなれば「物価の上昇は長期的に安定しない。そのような状況はおそらく誰も望まない」と強調した。
<緩和長期化、金融仲介機能に影響>
日本の金融システムの現状については、4月に日銀が公表した「金融システムリポート」を引用し、「全体として過熱感はみられないものの、金融機関の貸し出しスタンスなどいくつかの指標は過熱に近い状態にある」と指摘。
現在の低金利環境が長期化することで「金融機関の収益が長期にわたり圧迫されると、金融仲介機能に影響が生じる恐れもある」とし、こうした点を毎回の金融政策決定会合で点検し、「必要に応じて、最適な金融政策のあり方について、真摯に検討していくことが必要だ」と語った。
*内容を追加しました。
(伊藤純夫 編集:田中志保)