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日本株のインハウスのアクティブ運用を2月に開始=ゆうちょ銀副社長
5月22日、ゆうちょ銀行の佐護勝紀副社長(最高投資責任者、CIO)は、ロイターのインタビューに応じ、今年2月の世界株安局面を捉えてインハウスチームによる日本株式のアクティブ運用を開始したと明らかにした。写真は都内で昨年11月撮影(2018年 ロイター/Issei Kato)
[東京 22日 ロイター] - ゆうちょ銀行<7182.T>の佐護勝紀副社長(最高投資責任者、CIO)は22日、ロイターのインタビューに応じ、今年2月の世界株安局面を捉えて、インハウスチームによる日本株式のアクティブ運用を開始したことを明らかにした。3月末時点の残高は約300億円だが、将来的には数千億円規模まで増えるとの見通しを示した。
約210兆円の運用資産を持つ同行は、超低金利環境下で投資収益の向上を目指し、3年前にゴールドマン・サックス証券から加わった佐護副社長のもと、日本国債中心の運用からの脱却とリスク性資産を積み増す運用改革を実施。同氏は来月下旬に退任し、ソフトバンクグループ<9984.T>の取締役に就くことが内定している。
主なやり取りは以下の通り。
──今年ここまでの運用の進ちょく状況は。
「昨年立ち上げた日本株の自家運用チームだが、2月初めにようやく世界的に株価が10%以上調整する局面が来たので、少しずつだが、アクティブ運用を実際に開始した」
「銘柄選択は、今のところ完全なボトムアップでやっている。注目のセクターやテーマは差し控えるが、一般論としては、成長しそうな分野かやバリューの観点から割安かなどをみる」
「インハウスのアクティブ運用については、3月末時点の残高が約300億円、足元でもまだ数百億円程度だが、当行の日本株保有額が2兆円を上回ることを鑑みると、数千億円規模が適当な規模となる。将来的にはそのあたりまで増えると思う」
──日経平均も昨日、3カ月半ぶりに2万3000円を回復した。
「世界的に時間の経過とともにフェアバリューも上がっており、今回と前回の2万3000円はニュアンスが違う。また、基本は個別株なので、インデックスが上がったから個別株の積み上げを停止するということもない」
「今のところは落ち着いているが、日本株は、常に為替が暴れて円高に進むリスクをはらむ市場だ。円高になった時にはやはり弱いので、それをにらみながら投資していく」
──為替と金利の見通しについて。
「ドル/円は年内105─115円のレンジ推移という相場観を維持している。今の日米金利差を考えると、105円になったら、リスク・リターンの観点から見て悪くない。今の状況で105円に向かって円高になれば買い場だと思うし、当行だけでなく保険会社も買うだろうから、下値は割と堅いと思う」
「基本的に為替リスクは取らないという方針に変わりはない」
「とはいえ、日米の貿易問題、いま米国は対中国で頭がいっぱいだが、将来的に日本に矛先が向いた時に、問題が貿易にとどまらず為替水準の話に波及した場合には金融市場にも影響が出る。あくまでテールリスクだが、今後これが日米の問題となり、さらに問題が貿易にとどまらず為替に飛び火した場合は、10円ぐらい簡単に動くだろうから、100円割れもあり得る」
「米長期金利は年末にかけて3.5%くらい、方向性としては上がっていくとみる。人口動態など構造的に金利が上がりにくい半面、米トランプ減税がもたらすインフレ圧力と経済成長率の加速、需給面からも金利に上向きの圧力がかかっている」
「米金融引き締めが最終局面になれば米債買いに安心感も出てこようが、今はまだ、これから短期金利は上がり、長短金利差も無くなるかもしれない状況。為替オープンで覚悟を決めればともかく、金利だけでは米国債は買えない」
──今後の運用方針について。
「オルタナティブ資産の積み上げが最優先課題。あとクレジットについては、深掘りする余地がある。フィーも安く、投資対象も広がるパッシブへの切り替えを進めている。金利ものについては、為替リスクをとって米国債を買うならオルタナティブを積み増した方がリスク対比リターンが良い」
「オルタナティブについては、17年度末時点の残高1.6兆円から、20年度末で8.5兆円を目標に積み増す計画だ。当行では戦略投資領域と呼んでいるが、ヘッジファンド、不動産(エクイティおよびデット)、プライベートエクイティ(PE)、(プライベートデットの一種である)ダイレクトレンディングだ。特にPEに期待している」
──後任人事について。
「以前から10年かけての運用改革と言ってきたので、まだあと7年ぐらいいると思われていたかもしれないが、改革という作業は終了した。ここからは自分がいなくてはできないとは思わない。元々トップが間違うと皆が間違うようなキーパーソンリスクがある組織にはしたくなくて、厚みのある運用チームを作った」
「3年前の入行当時に考えていたアイデアの9割は実現できた。さすがに壮大過ぎたものもあるが、逆にいま不動産投資部でやっていることなど、当初のアイデア以上のことができたことも多く、点数をつけるなら150点だ」
「ここからは、旧サテライトポートフォリオからのリターンの刈り取りを行う時期、それを見守る時期に入る。見守る選択肢もあるが、自分は新しい挑戦を選んだ」
「後任については、田原邦男専務執行役と、委託運用は星野泰一市場部門専務執行役員、その2人の共同責任でやっていく」
*内容を追加しました。
(インタビュアー:植竹知子、佐野日出之 編集:伊賀大記)