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資産運用、社会インフラ融資などに注力=第一生命社長
4月19日、第一生命ホールディングスの稲垣精二社長は、国内の低金利環境は少なくとも今後3年は続くと述べ、比較的高い利回りが期待できる社会インフラ融資などへの運用マネーのシフトをさらに進める考えを示した。昨年撮影(2018年 ロイター/Toru Hanai )
[東京 20日 ロイター] - 第一生命ホールディングス<8750.T>の稲垣精二社長は20日までにロイターの取材に応じ、国内の低金利環境は少なくとも今後3年は続くと述べ、比較的高い利回りが期待できる社会インフラ融資などへの運用マネーのシフトをさらに進める考えを示した。
<米国債の新規投資、ほとんどせず>
日銀の大規模金融緩和を受け、第一生命など国内の生保会社にとってこれまで運用の主軸だった国債では契約者に約束した利回りの確保が困難になっている。そのため、外債などへの投資を増やしている。
「黒田バズーカ」直前の2012年度末で第一生命が保有する国債はおよそ14兆円、外国債券は約5.2兆円だった。昨年9月末時点では国債は横ばいの13.9兆円に対し、外国債券は8.8兆円となっている。
国内生保が米国債などの外貨建て資産で運用する際には、為替変動リスクを避けるためヘッジをすることが多い。為替ヘッジコストは対象通貨と円との金利差などで決まる。
生保にとって悩ましいのは、米国の利上げを受け、ドルのヘッジコストが上昇していることだ。ドル円のヘッジコストは現在、2.4%程度、2.8%台の米10年国債の利回りでは、ヘッジコストを差し引いた後では超長期の日本国債の利回りと変わらない水準になってしまう。
稲垣社長は「今はほとんど米国債への新規投資をやっていない」と説明、ヘッジコスト考慮後でも利回りの確保できるユーロ圏の国債などに投資していると語った。
市場ではヘッジ付き米国債の投資妙味が薄れたことで、生保による超長期国債への回帰を予想する声もある。ただ、稲垣社長は「国債の30年物といっても、利回りは0.7%か0.8%程度。プロジェクトファイナンスなど、それ以上のリターンを稼げるものは円建てでもあるので、そこに注力していきたい」と述べた。
稲垣社長は低金利が長期化するなか、運用資産全体の利回りを下げないようにするために、規模を拡大せず、償還で戻ってきたお金の再投資を中心にしていると説明。
一時払いといわれる貯蓄型商品の販売を停止しているのもそのためだ。月払いの保険商品に比べ、契約時に一括して保険料を支払う一時払いは、退職金などのまとまった資金の運用先として人気があった。
稲垣社長は「高齢者の人口が増え、人生100年ともいわれる時代で自助努力がすごく重要な局面。そこでしっかりした貯蓄性商品、年金で魅力的なものが出せないのがすごく歯がゆい」と運用難の中での生保経営の難しさを吐露する。「一時払い商品については外貨建てで対応していきたい」とも述べた。
<M&Aは予定せず>
第一生命は2015年に米保険プロテクティブ社を約5750億円で買収。その後相次いだ国内生保による巨額買収の先陣を切った。
稲垣社長は2020年度を最終年度とする中期経営計画では、カンボジアやミャンマーといったアジアの新興市場への参入に力を入れていくとし、「買収で入るというよりも新規設立でやっていきたい」と述べた。
欧州などその他地域でのM&A(企業の合併・買収)の可能性についても、調査は引き続き行っているが、優先度は高くないとした。第一生命は2013年に中国で現地企業との合弁設立計画を解消したが、同国市場への再参入についても中計の3年間の間では予定していないとも述べた。
(浦中 大我)