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日本のエネルギー政策は官邸が決定、原子力の議論回避=橘川教授

2018年04月13日(金)16時56分

 4月13日、橘川武郎・東京理科大イノベーション研究科教授は、都内で講演し、日本では現在、長期的視野に立つべき原子力政策の議論が行われていないと指摘した。写真は柏崎刈羽原子力発電所。2007年7月撮影(2018年 ロイター/Issei Kato)

[東京 13日 ロイター] - 橘川武郎・東京理科大イノベーション研究科教授は13日、都内で講演し、日本では現在、長期的視野に立つべき原子力政策の議論が行われていないと指摘した。

講演の中で橘川教授は「日本のエネルギー政策を決めているのは首相官邸で、次の選挙のことだけを考えている」と表明。その結果、長期的視点にたったエネルギー政策の行方について、深い議論が行われていないとの見解を示した。

橘川氏は、国の「エネルギー基本計画」の見直しに向けた議論を行っている経済産業省総合資源エネルギー調査会基本政策分科会のメンバー。経産省は3月末に同分科会で、今夏までに閣議決定する基本計画見直しにおいて、15年度に定めたエネルギーミックス(電源構成)比率目標を変えない方針を示した。

橘川氏は、この点について「ほとんどの関係者が失望している」とし、見直しのために議論したのに、最初から比率を見直さないことが前提となっていたと指摘した。

政府は、2030年までに再生可能エネルギーの比率を22―24%、原子力の比率を20―22%程度とするとしているが、橘川氏は、原発は15%程度とし、再生エネルギーを30%に引き上げることが適正だと主張している。

同氏は、原発の稼働可能期間をこれまで通り40年とすると、2030年までに30基以上が廃炉となり、政府目標の原発依存度20―22%の達成は不可能だと予想する。

政府の原子力政策は、次の選挙対策を重要視する首相官邸が決めているため、「原子力の問題は触らない方がいいとして、3年ごとに先延ばしされている」と厳しく批判。「日本の原子力政策には戦略がないし、司令塔もいない。ここに福島(原発事故)以降の最大の問題がある」と指摘した。

(宮崎亜巳 編集:田巻一彦)

ロイター
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