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焦点:高まる「貿易戦争」リスク、最も嫌われる通貨は
3月18日、トランプ米政権の通商政策が世界的な貿易紛争を招くのではないかとの観測が取り沙汰されているにもかかわらず、外為市場はこれまでのところ比較的落ち着きを保っている。2016年撮影(2018年 ロイター/Jason Lee)
[ロンドン 18日 ロイター] - トランプ米政権の通商政策が世界的な貿易紛争を招くのではないかとの観測が取り沙汰されているにもかかわらず、外為市場はこれまでのところ比較的落ち着きを保っている。
しかし通商問題は過去に外為市場を大きく揺さぶっており、投資家は慢心は禁物と気を引き締めている。
トランプ政権は先に鉄鋼とアルミニウムに関税を課す輸入制限の発動を決定。さらに中国からの輸入品のうち最大600億ドル相当に関税を課す計画であることが明らかになった。
19─20日にアルゼンチンで20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が開かれるが、市場関係者は米国と諸外国の外交・通商関係が悪化しないかどうか注目している。
外為市場は通商紛争を嫌う。2016年5月に当時のオバマ米政権が中国製鋼板に反ダンピング関税を課す方針を決めた際にはドル指数<.DXY>が1カ月で2%強下落し、対人民元では2%上昇した。
また2002年3月は当時のブッシュ米大統領が欧州連合(EU)製鉄鋼製品に対する輸入制限を発動。ドルが3カ月間で6%下げた。
今回、為替市場のボラティリティは2月にいったん急上昇した後、低水準に戻ったが、投資家は相場が大荒れとなる兆しを早期に捕まえようと目を光らせている。
インベステック・アセット・マネジメントのカレンシーマネジャー、ラッセル・シルバーストン氏は「今のところ通商紛争は話題として取り上げられているだけだ。しかし誤解しないでほしい。われわれは(通商紛争の見通しを)重大なイベントリスクとして織り込んでいる」と述べた。
ボラティリティが低く、投資家がハイリスクの投資戦略に手を染めているだけに、通商紛争が起きた場合に外為市場は大きな影響を受けるだろう。新興市場国通貨の投機的なポジションはこの数年で最高の水準に達している。
ミレニアム・グローバルのポートフォリオ投資部門の共同ヘッド、リチャード・ベンソン氏は「アジア諸国の通貨の反応が鈍いのに驚いている。中国の反応を待っているに違いない」と述べた。
ベンソン氏は通商紛争が起きれば為替市場は大きく動き、特に韓国ウォン
INGのストラテジストチームは先進国通貨について、G10諸国で経済のオープン化が2番目に進んでいるスウェーデンのクローナ
一方、バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチの予想によると最もリスクが高いのはカナダドル
ドルは、短期的にはユーロと円に対して売られるが、世界的に成長が落ち込んだり市場が幅広く売られれば準備通貨としての優位性で買われると予想されている。
通商紛争の勃発で間違いなく上昇するとみられているのが円。日本が巨額の経常収支黒字を抱え、巨額の対外投資を背景に資金逃避先としての評判が確立しているためだ。
クレディ・アグリコルの外為ストラテジストのマニュエル・オリベリ氏は「もし貿易戦争が起きれば円は資金の逃避先になる」と述べた。
(Tommy Wilkes記者、Saikat Chatterjee記者)