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インタビュー:日銀新体制、事実上の正常化路線を継続へ=木内・元審議委員

2018年02月20日(火)15時39分

 2月20日、昨年7月まで日銀審議委員を務めた野村総合研究所・エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏はロイターとのインタビューで、黒田東彦総裁の続投を柱とした日銀の新体制について、現行の事実上の金融政策正常化路線が継続することになるとの見方を示した。写真は都内で2016年2月撮影(2018年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 20日 ロイター] - 昨年7月まで日銀審議委員を務めた野村総合研究所・エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏はロイターとのインタビューで、黒田東彦総裁の続投を柱とした日銀の新体制について、現行の事実上の金融政策正常化路線が継続することになるとの見方を示した。ただ、マイナス金利政策の撤廃には2%の物価安定目標を柔軟化させる必要があるとし、年内は難しいと語った。インタビューは19日に実施した。

政府は16日、日銀総裁に黒田氏の続投と2人の副総裁に若田部昌澄・早稲田大学教授、雨宮正佳・日銀理事を起用する人事案を国会に提示した。

木内氏はこうした人選について「継続性を重視したがゆえに、黒田総裁を続投させたといえる。日銀プロパーからの昇格、リフレ派の学者という副総裁の構成も変わらなかった」と指摘した。

また、国債買い入れ額の圧縮など「事実上の正常化を進めている現在の金融政策を維持にすることで、今の経済・金融環境を続けてほしい、という政府の意向を反映した人事」との見方を示した。

もっとも「正常化イコール緩和をやめるということではない。緩和のペースを徐々に緩やかにするのが正常化の第一段階で、その動きが続くということだ」と説明。緩和継続によって金融仲介機能や市場機能への影響など副作用が懸念がされる中で、新体制では「企画局のみでなく、金融市場局や金融機構局なども含めた組織全体でリスクをウオッチしていく集団的なリスク管理体制が進む」との見通しを示した。

大規模な金融緩和を重視するリフレ派の若田部氏が副総裁に指名され、金融政策の正常化路線に異を唱える可能性があるが、木内氏は「最初は抵抗するだろう」としながらも、「執行部である副総裁が議長案に反対し続けることは難しい」との見方を示した。

若田部氏は国債買い入れの増額の必要性を主張しているが、日銀は2016年9月のイールドカーブ・コントロール(YCC)政策の導入によって「量の拡大の影響を否定したことを受け入れた。YCC導入で事実上、攻めの金融政策は終わり、守りの政策に入った」と述べた。

また、国債買い入れ増額は「物理的に可能かどうか。銀行への影響がどう出るのかわからない部分が多い」と述べるとともに、「安倍晋三首相自身も、日銀に国債買い入れを増額してほしいと思ってはいないはずだ。そうした主張に固執することで、首相との関係も悪化させてしまいかねない」との見方を示した。

日銀の新体制が国債買い入れの減額を進めることができたとしても「マイナス金利の解除は難しい」とし、マイナス金利撤廃には「2%の物価目標の定義の柔軟化が必要だ。これはハードルが高く、今年中は難しい」と語った。

それでも物価2%目標を達成できていない黒田氏が再任にされたことは、「政府としても無理やり2%インフレを短期間に達成することに固執していないことの証左だ」と述べ、「そうであれば、政府から強い反発を受けずに2%の物価目標の定義を柔軟化する余地が生まれる」との見解も示した。

(木原麗花 編集:伊藤純夫)

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