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ロイター企業調査:ベア予定が半数、3%賃上げ「現実的」が増加

2018年02月20日(火)11時30分

 2月20日、2月ロイター企業調査では、今年の春闘でベースアップを実施する企業が増えて半数近くにのぼることが明らかとなった。写真は都内のオフィスビル、2015年3月撮影(2018年 ロイター/Issei Kato)

[東京 20日 ロイター] - 2月ロイター企業調査では、今年の春闘でベースアップを実施する企業が増えて半数近くに上ることが明らかとなった。また3%という政府からの賃上げ要請を「現実的な目標」と捉える企業が、年初来増えていることが分かった。

働き方改革に伴う長時間労働削減の動きが広がっているが、残業減が労働コスト削減につながっている企業は3割程度。それらの企業では、社員にその分を還元し、収入の減少につながらないよう対応する予定だ。他方で、非正規社員と正規社員の同一労働同一賃金実施により過半数の企業でコストが上昇するとみており、特に非正規比率の高い業種ではコストの大幅な上昇が懸念されている。

この調査は、資本金10億円以上の中堅・大企業400社を対象に1月31日─2月14日に実施。回答社数は236社程度。

<ベア実施企業、5割近くに増加>

今春闘でベースアップを実施する方針の企業は、昨年より約10ポイント増の5割程度となり、前年以上のベアを予定している企業が増えた。

理由として「業績の向上」(化学)に加え、「人員不足が深刻であり、待遇改善が必要」(食品)といった理由が挙げられている。また「政府や経団連の方針でやむを得ず」(輸送用機器)といった回答も複数あり、外部圧力も効果があったようだ。

他方で、実施しない方向との回答は52%と、昨年調査の63%からは減少。

「今後の経営環境悪化時に重荷になる」(輸送用機器)、「従来通り賞与に反映させる」(サービス)といった企業や、「評価反映による昇給を重視し、一律の賃上げは縮小する」(輸送用機械)といった方針を掲げる企業もある。

安倍晋三首相が要請している3%賃上げについても、経団連が呼びかけた効果もあり、やや浸透し始めたことがうかがえる。

「現実的な目標」との見方が12月調査から2カ月の間に10ポイント増加して41%を占めた。「あまり現実的でない目標」との見方は52%、「全く論外」は7%。

<働き方改革、3割が残業削減で社員還元へ>

働き方改革に取り組む企業は多いが、長時間労働の削減により労働コストが減った企業は32%。全体には広がっているとは言えない。もともと長時間労働が少ない企業もあるが、むしろ、景気状況が非常に良い現状では労働時間の削減は難しいということもある。「生産が逼迫している」(機械)、あるいは「社員による協力が進まない」(同)など多忙な状況があるほか、「時間短縮はかえって人員増に反映される」(不動産)などのコメントもある。

さらに「採用コストの上昇」(サービス)といった事情も影響している。

長時間労働削減で残業代が減少した分を社員に還元する予定があるとの回答は29%。労働コストが減った企業のほとんどが、その分を還元する方針であることがわかった。

「組合にはベアで還元すると説明している」(運輸)という企業や、「賞与の上乗せ」(建設など複数)、「福利厚生の形で還元」(小売)など、還元方法はさまざまだ。

<非正規同一賃金、自動車・小売・運輸でコスト大幅上昇>

働き方改革では、非正規と正規社員の間で同一労働同一賃金の実施が求められることになっている。2019年なし20年をめどに実施される予定だが、非正規社員に頼っている業種もあり、「労働コストはかなり上昇する」との回答は11%。

特に非正規社員の多い「小売」、「運輸」、「輸送用機器」からのコメントが目立つ。「パートタイムの非正規社員の人数構成が高い」(小売)、「工場で作業を行う正規従業員を基準とする場合に、大きなコスト上昇が懸念される」(輸送用機器)という。

また「非正規社員のコストはかなり抑えられている」(機械)企業には負担増が大きい。「社会保険料の負担が増加する」(輸送用機器)、「付随する諸手当が加算される」(小売)といったコストも発生するようだ。

雇用契約が通算5年を超える非正規社員の無期雇用転換が4月に始まるが、その前に「雇い止め」を行った、または行う予定があるとの回答は11%となった。「誰でも正規社員に登用するつもりはない」(輸送用機器)、「コストアップになる」(サービス)といった理由からだ。

もっとも9割の企業は「雇い止めは行わない」方針。「製造ラインが人手不足だから」(食品)、「経験を重視している」(機械)、「必要な人は無期雇用とすべきだと考えている」(機械)という。

(中川泉 編集:田中志保)

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