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ラトビア銀行部門、大手銀の資金洗浄疑惑・中銀総裁逮捕で大揺れ

2018年02月20日(火)08時03分

 2月19日、欧州中央銀行(ECB)は19日、ラトビア銀行業界3位のABLV銀行による全ての支払いを停止したと発表した。同行が資金洗浄(マネーロンダリング)に関与したとされているため。写真はABLV銀行のロゴ。ラトビアの首都リガで18日撮影(2018年 ロイター/Ints Kalnins)

[フランクフルト/リガ/ブリュッセル 19日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は19日、ラトビア銀行業界3位のABLV銀行による全ての支払いを停止したと発表した。同行が資金洗浄(マネーロンダリング)に関与したとされているため。

ラトビアではこれに先立つ17日、 欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーのリムシェービッチ中銀総裁が賄賂を要求した疑いで逮捕されている。当局は、総裁の逮捕はABLV銀の件とは無関係としている。総裁は勾留期限が切れた19日、釈放された。

ECBは「ここ数日、ABLV銀行の財務状態は急速に悪化している」とする声明を発表。

米財務省は先週、ABLV銀行が顧客による北朝鮮との商取引を容認し、国連の制裁に違反したとして同行に制裁を科すよう求めていた。

米財務省の連邦犯罪取り締まりネットワーク(FCEN)は2月13日付の声明で、「ABLV銀は資金洗浄を商慣行の柱としていた」と指摘。疑惑を持たれている同行の活動の一部は北朝鮮の弾道ミサイル計画と関係があるとの見方を示し、銀行幹部がこうした活動を隠滅(いんぺい)するためにラトビア当局者に賄賂を渡していた疑いもあるとした。

ABLV銀は米当局が指摘した嫌疑は根拠がなく、誤った情報に基づくものだと主張。副最高経営責任者(CEO)、バデイムス・レインフェルズ氏は記者会見で「ABLV銀はいかなる違法行為も行っていない。制裁措置に対する違反はなかった」と断言した。

ABLV銀は米財務省による制裁勧告を受けて預金総額の約22%に当たる6億ユーロの預金が引き出されたとし、ラトビア中銀に一時的な流動性支援を要請。ラトビア中銀は同行に対し9750万ユーロの資金を供給することで合意したが、資金供給の詳細は今後協議する必要があり、ABLV銀は現時点ではまだ資金を受け取っていない。

ABLV銀は、十分な流動性と資本を保有しているため政府による救済は求めておらず、一時的な流動性支援を要請したにすぎないとしている。

ラトビアは1991年に旧ソ連から独立。欧州連合(EU)に2003年に加盟した後、2014年にユーロを導入した。

米財務省のFCENはラトビアの銀行システムについて、非居住者の預金に対する依存度が高いために金融不正のリスクが高まっていると指摘。「ペーパーカンパニーを含むオフショア企業がラトビアの銀行に口座を開設し、取引を行える状態になっている」とし、旧ソ連の関係者がラトビアを通じて取引を行っていている可能性を指摘した。

FCENによると、ラトビアの銀行における非居住者の預金残高は約130億ドルに上っている。

これとは別にラトビア当局は、賄賂を要求した疑いでリムシェービッチ中銀総裁を17日に逮捕。48時間の勾留期限が切れた19日に釈放された。

ラトビアの汚職防止・対策局の責任者、ジェカブズ・ストラウム氏は記者会見で、リムシェービッチ中銀総裁の逮捕容疑は「約10万ユーロの賄賂を要求した」ことだと明らかにした。警察も汚職対策局も賄賂の詳細については明らかにしていないが、当局はABLV銀を巡る調査に関連したものではないとしている。

リムシェービッチ氏は釈放後、「容疑を完全に否認する」と発言。ただ、ラトビアのクチンスキス首相が辞任を勧告するなど、リムシェービッチ氏に対する圧力は高まっている。

リムシェービッチ氏の弁護士によると、同氏は20日に記者会見を開く予定。

ブリュッセルで開かれているユーロ圏財務相会合に出席中の欧州委員会のモスコビシ委員(経済・財務担当)は、ABLV銀の資金洗浄疑惑およびラトビア中銀総裁の逮捕について「特にコメントはない」としながらも、「われわれは資金洗浄や脱税らしきものはすべて非難する」と述べている。

*内容を追加しました。

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