ニュース速報
ビジネス
アングル:揺れる米資産運用会社、海外債や新興国株に活路も
2月12日、米金融市場は主要株価指数が週足で2年ぶりの大幅な下げを記録し、10年物国債利回りは4年ぶりの水準に上昇するなど大荒れとなったため、資産運用会社は資金配分の見直しを進めている。ニューヨーク証券取引所で9日撮影(2018年 ロイター/Andrew Kelly)
[ニューヨーク 12日 ロイター] - 米金融市場は主要株価指数が週足で2年ぶりの大幅な下げを記録し、10年物国債利回りは4年ぶりの水準に上昇するなど大荒れとなったため、資産運用会社は資金配分の見直しを進めている。
ただ、連邦準備理事会(FRB)が景気過熱を抑え込もうと利上げを準備する半面、政府は大規模な減税や歳出拡大など景気刺激策を採り、金融政策と財政政策は綱引き状態。このため資産運用会社は投資先探しに苦労し、海外の債券や新興市場国株、現金などに資金を振り向けている。
米政府は与党・共和党主導で1兆5000億ドル規模の減税を実施。議会は2年間で歳出上限を3000億ドル引き上げる予算法案を可決した。
一方、ニューヨーク連銀のダドリー総裁は8日、大規模な減税が景気をさらに刺激して米経済成長が拡大を続ければ、年内に3回以上の利上げもあり得ると述べた。
ウェルズ・ファーゴ・アセット・マネジメントのグローバル最高投資責任者のカーク・ハートマン氏はこうした状況について「未踏の領域だ」と話す。
ドル建て資産からの資金流出を引き起こしているのはインフレ懸念だ。米国の1月の時間当たり平均賃金の上昇率は2.9%と2009年以来の高い伸びとなり、市場は少なくとも年内3回の利上げを織り込み始めた。そうなると指標となる10年物米国債利回りは4%近くまで上昇し、成長を鈍らせる可能性がある。
ジェームズ・バランスト・ゴールデン・レインボー・ファンドのポートフォリオマネジャー、マット・ワトソン氏は「当社は株と債券の両方で非常に用心深くなり、投資機会の改善を待っている」と述べた。ワトソン氏は現金の保有比率を高めたという。
リッパーが8日公表した米ファンドの資金動向調査によると、7日までの週の米株式市場からの資金流出は239億ドルと過去最大。一方、インフレ連動債への流入額は8億5900万ドルと2016年11月以来最大で、新興国株も2億9100万ドルの流入と年初から流入が続いている。
キャピタル・エコノミクスのチーフ・マーケット・エコノミストのジョン・ヒギンス氏は「緩和的な財政政策でインフレが加速するというのが目下のリスクだ」と述べた。
米株式市場が弱気相場入りすると見込む資産運用会社は少なく、株価が急落しても米経済がすぐに影響を受けることはないとみられている。しかしゴールドマン・サックスによると、世界的な成長にとってはいくらかリスクがあるという。
T・ロウ・プライスの債券ポートフォリオスペシャリストのクリス・ディロン氏は「FRBが2019年に4回利上げし、10年物米国債の利回りが4%台に達して、株式市場に悪影響を及ぼす可能性はあるとみている」と話す。このためディロン氏は全体的に米国債のポジションを減らし、ヘッジのない海外債券を買っているという。
コロンビア・スレッドニードルのシニア・ポートフォリオ・マネジャーのジーン・タヌッツォ氏は、FRBと欧州中央銀行(ECB)、日銀、イングランド銀行がいずれも年内に金融緩和策を縮小し、債券の需要が弱まり、利回りは上昇すると見込んでいる。このため米投資適格級債の投資比率を引き下げ、現金の比率を高めている。
また、ブラジルやロシア、タイの株式市場など、米国発の動揺が波及せず、年初から上昇している市場もある。GMOのアセット・アロケーション・チームのキャサリーン・ルグロウ氏は、新興国の株式市場が今後7年間にインフレ調整後で年6%程度上昇するとみている。
(David Randall記者)