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インタビュー:欧米企業の買収活発化、収益貢献も=みずほFG副社長

2018年02月19日(月)07時20分

 2月19日、みずほフィナンシャルグループで海外事業を統括する菅野暁副社長(グローバルコーポレートカンパニー長)は、ロイターのインタビューで、18年度は、企業の動きが活発になるとして、さらに収益の回復を見込むという。写真は都内で昨年1月撮影(2018年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

[東京 19日 ロイター] - みずほフィナンシャルグループ<8411.T>で海外事業を統括する菅野暁副社長(グローバルコーポレートカンパニー長)は、ロイターのインタビューで、2017年度上期は欧米企業が米国の減税政策を見極めるために買収などの動きが鈍く、貸出や手数料収益が低迷したものの、下期に入って大きく持ち直していると語った。18年度は、企業の動きが活発になるとして、さらに収益の回復を見込むという。

また、同社が進めている世界の有力企業300社をターゲットに取引を深める戦略について「収益のボラティリティが上がっている」とし、今後は買収などの企業動向に左右されない商業銀行的なビジネスにも注力し、安定収益の確保を図る考えを示した。

インタビューの詳細は以下の通り。

――海外の収益が落ちているのではないか。

「貸出は17年度上期に1度下がったものの、下期から戻っている。マーケット環境で貸し出ししたい企業に出せなかったのが理由だ。というのも、現在の中期経営計画では事業ポートの入れ替えを企図して、採算性の低い企業から、グローバルに取引を進めている世界の有力企業300社や日系企業、預金をもらっている企業など採算性の高い先に対して残高を積もうとしていた」

「不採算先からのエグジットは計画通りに進めることができたが、新たに貸し出しする有力企業の動きが17年度上期に鈍かった。原因は、アメリカや一部欧州の優良企業が、トランプ減税の先行きを見極めていたからだ」

「減税の規模により、買収する側とされる側それぞれでキャッシュフローが全然違ってしまう。このため、大きな買収案件がほとんどなかった。われわれのビジネスモデルは、顧客企業が買収する際のブリッジ・ファイナンスに参加し、そこから手数料をもらったり、将来的なパーマネント・ローン、あるいは社債発行に繋げて収益を上げるモデルだ。そうした案件が環境要因で大きく減り、ローンの残高も増えず、非金利収益も上がらなかった」

――下期と来期の見通しはどうか。

「下期は残り1カ月半あるが、ほぼ計画通りに戻ってきている。上期だけが異常値だ。12月末にトランプ減税の見通しが立ち、企業も動き出してきて、収益が上がってきている。引き続き、アジア・オセアニアは好調に推移しており、下期は計画を上回る。来期は今まさに業務計画を作っている最中だが、この下期をベースにしてどこまで伸ばせるのかと考えている」

「伸長が期待できる理由は、やはり米国の減税の効果だ。減税でキャッシュ・リッチになった企業が買収活動をさらに活発化させるだろう。実際に顧客企業の中でも、買収を計画してわれわれに融資を求めてきている先がいくつか出ている」

――顧客企業の動きに依存するビジネスモデルになっているが。

「現在のインベストメント・バンキング(IB)的な戦略はイベントがあった時に収益が大きく出るビジネスモデルだ。企業買収がある程度の頻度で発生しないと収益にならない。確かに、収益のボラティリティが上がっている。ただ、貸出資産を無尽蔵に積むことができない中で、今のIB的ビジネスモデルはアセットをたくさん使わずに済む。ブリッジ・ローンは最長でも1年で、それを回転させていくことができる」

「一方で、収益の変動性をそのまま受け止めるのではなく、打ち消すための取り組みも進めている。アジアでは、企業のサプライ・マネジメントやキャッシュ・マネジメントなどトランザクション・ビジネスにも地道に投資をして、前年比30%程度で粗利は増えている。IB的な動きが激しい世界とは異なり、コマーシャルバンキングの真髄だ。さらに強化すれば、収益の変動性をある程度吸収できる」

――アジアでの買収戦略についてどのように考えているか。

「現状、アジアで展開しているのは大企業取り引きだけだ。ビジネス・パーツとして抜け落ちているのは、中堅・中小企業取引とリテール。これはなかなか単独でゼロから立ち上げるのは難しい。他行も現地金融機関を買収する戦略を取っている。我々も過去5―6年、ずっとその機会を探しているが、結果としてまだ手掛けていない。価格が高い。投資回収を考慮すると、本当にやっていいのかと考える」

「現地の大手金融機関トップに言われたが、例えばインドネシアなどでもスマートフォンを利用した金融取引の方が支店の取り引きよりも10倍も伸びている。日本でも来店客数は大きく減っている。そういう動きがさらに大規模に起こっている。そういう意味では、デジタルを使った展開なども考えられる。もちろん、それでも単独ではなかなか難しいが、ここは1度立ち止まって考えたい。今までは確かに現地の有力金融機関への出資や買収を考えていたが、そうではない道もあるのではないかと思う」

このインタビューは14日に実施しました。

(布施太郎 編集:田巻一彦)

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