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株価急落影響なし、政策調整十分あり得る=鈴木日銀委員
2月8日、日銀の鈴木人司審議委員は、和歌山市で就任後初の記者会見を行い、先週末以降の世界的な株価急落は日銀の政策に影響ないとの見方を示した。鈴木委員は「国内外の企業収益や経済のファンダメンタルズはしっかりしている」と指摘、「現段階で追加緩和の必要性はない」と明言した。写真は昨年1月、日銀本店で会見する同審議委員(2018年 ロイター/Issei Kato)
[和歌山市 8日 ロイター] - 日銀の鈴木人司審議委員は8日、和歌山市で就任後初の記者会見を行い、先週末以降の世界的な株価急落は日銀の政策に影響ないとの見方を示した。鈴木委員は「国内外の企業収益や経済のファンダメンタルズはしっかりしている」と指摘、「現段階で追加緩和の必要性はない」と明言した。一方、長期金利目標の引き上げなど政策の調整は今後十分あり得ると強調した。
<リーマン前の状況でない>
日銀内では昨年来、大規模な国債買い入れの持続性を確保するためにも、現在ゼロ%としている長期金利の目標水準を若干引き上げるとの議論があり、世界的な市場急変を受けた日銀の対応が注目されている。
鈴木委員は株価急落について「株価は、短期的に様々な要因で変動している」とし、「日本株の下落は米株につられたとの指摘があるが、日本経済に変調をきたしていることはない」との見解を述べた。
株価急落を受け2008年のリーマン・ショックのような実体経済にも響く世界経済急変の懸念も出ているが、鈴木委員は「市場参加者の多くがリーマン・ショックの痛み経験している」とし、「日本の株価は企業収益に基づいた足取りの堅い動き」であり、「リーマン・ショックの前のような状況には至っていない」との見解を示した。
<政策持続性強化のため、調整あり得る>
日銀の政策運営については、2%の物価目標実現に向けた物価の「モメンタム(勢い)は、維持されている」と指摘し、「道半ばとはいえ(2017年12月実績で)0.9%(まで上昇しており)と改善が続いている」と強調。「現状の緩和を、粘り強く見守る必要がある」との姿勢を強調した。
政策微修正の有無を巡っては、「今後も経済・物価・金融情勢を総合的に判断して必要な調整を行う」と述べ、物価が順調に2%の目標に向かって上昇モードを続けるならば、金利目標の引き上げなど「政策調整の可能性は十分はある」と明言した。同時に「そのような意見は一部にとどまっている」と付け加え市場の早期調整観測をけん制した。
現在2019年度としている2%の物価目標の達成時期を、さらに延期せざるを得ない場合は、大規模な国債買い入れをさらに長期間続ける必要が出てくるため、「政策の持続性を強化する観点から、調整は十分ありうる」との意見を表明した。市場関係者の間では、メガバンク出身の鈴木委員は調整に前向きとの観測がある。
政策調整の際、金利目標の引き上げと、上場投資信託(ETF)買い入れの見直しについて「どちらが優先されるか考えたことはない」という。もっともETFは、国債と異なり償還期限がないことなどから「未来永劫に買い続けていくものではない」とも述べた。
1月に日銀の国債買い入れ額が市場予想より減額され、日銀の緩和縮小観測から為替市場が円高方向に振れた経緯について、「投資家に説明責任を果たし、理解を求めていく」とした。
(竹本能文)