ニュース速報

ビジネス

財政緊縮ペース加速すれば物価目標達成困難=岩田日銀副総裁

2018年01月31日(水)12時26分

 1月31日、日銀の岩田規久男副総裁(写真)は、大分市で講演し、政府が財政健全化を急ぐあまり「財政の緊縮ペースを加速した結果、成長率が低下すれば、財政健全化も2%の物価目標の達成も困難になる」と述べた。写真は都内で2013年6月撮影(2018年 ロイター/Toru Hanai)

[大分市 31日 ロイター] - 日銀の岩田規久男副総裁は31日、大分市で講演し、政府が財政健全化を急ぐあまり「財政の緊縮ペースを加速した結果、成長率が低下すれば、財政健全化も2%の物価目標の達成も困難になる」と述べた。岩田副総裁は大胆な金融緩和を提唱するリフレ派の代表的な論客で、アベノミクス誕生のキーパーソンだが、3月に任期を迎える。後任の世代の政府・日銀による緩和的な金融政策と積極的な財政支出継続に期待を寄せた。

<消費税率引き上げで予想物価上昇率弱含み>

岩田副総裁は物価目標を実現する上で「金融緩和と並んで政府の取り組みも重要」「5年間でしみじみ感じた」と指摘し、5年間の金融緩和でも物価が目標の2%に達していない一因として、「人々の予想物価上昇率が2%にアンカーされる前に消費税率の引き上げなどで弱含みに転じてしまった」との持論を展開した。

欧州経済が財政の緊縮ペースを緩め量的緩和を導入したことで景気が回復した例などを詳述し、「財政緊縮は緊縮額の乗数倍の緊縮効果がある」と指摘した。

日本においても「実体経済や物価を無視して基礎的財政収支(プライマリーバランス)黒字化などの財政健全化を急ぐと結局、財政健全化も達成できない」と繰り返した。

その上で、政府による子育て・教育支援策は「財政の緊縮ペースを適正化し、消費・内需を拡大する有効なマクロ経済政策」と評価した。

昨年11、12月時点で前年比0.9%にとどまっている物価(消費者物価指数、除く生鮮)について「弱めの動きとなっている」とし、「2%の目標までにはなお距離がある」として、「強力な金融緩和を粘り強く続けることが重要」とした。

物価は毎年2%くらい上がるものとの物価観が人々の間で定着するには「実際に2%を超える物価上昇率を経験する必要がある」と強調した。

<現行政策「最も効果大で副作用小さい」>

岩田副総裁は、短期金利をマイナス0.1%、長期金利をゼロ%とするように国債買い入れを進める現行の「長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)」について「最も効果が大きく、副作用が小さい」と強調。金融緩和の長期継続はリスクがあるとの指摘に対しても、「労働生産性を引き上げる環境を整える」「緩和的な金融政策と積極的な財政支出の相乗効果によって景気刺激効果がより強力になる」と反論した。

今後の政策運営についても「より適切な政策があり得るか不断に追求すべきだが、そうした政策の効果に確信が持てない限り、現在の政策を続けるべき」とし、早すぎる緩和縮小に踏み切らぬよう警鐘を鳴らした。

<「私は再任されないと確信」>

岩田副総裁は講演時間の超過を伝えられた際、「今回最後の講演なので少し長めに話したい。私は再任されないと確信しているから」と述べた。岩田副総裁は中曽宏副総裁とともに3月中に任期を迎える。4月には黒田東彦総裁も任期を迎える。3人の正副総裁人事を巡り、金融市場では黒田総裁の再任観測が根強い。

*内容を追加しました。

ロイター
Copyright (C) 2018 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ前米大統領、麻生自民副総裁と会談=関係者

ワールド

北朝鮮「圧倒的な軍事力構築継続へ」、金与正氏が米韓

ビジネス

中国人民銀、国債売買を政策手段に利用も=高官

ビジネス

米テスラ、新型モデル発売前倒しへ 株価急伸 四半期
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 6

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 7

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 8

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 10

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中