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訂正:「逆張りETF」から資金流出、個人投資家は株高警戒
1月18日、代表的な逆張り型ETF(上場投資信託)である日経ダブルインバース指数ETFの資産が減少している。都内で2015年撮影(2018年ロイター/Toru Hanai)
[東京 18日 ロイター] - 代表的な逆張り型ETF(上場投資信託)である日経ダブルインバース指数ETF<1357.T>の資産が減少している。これまでの株高局面では個人投資家が相場反落を予想して買いを入れることが多かったが、今回は様相が異なる。
日経平均<.N225>が2万4000円台に乗せるなど株価は26年ぶりの高値圏にあるものの、信用取引の売り残も増えていない。個人は株価の反落よりも一段の上昇リスクを警戒しているようだ。
<「逆張り」ETFが逆行>
野村アセットマネジメントが設定・運用する日経ダブルインバース指数ETFは、日経平均が1%下落した際に2%上昇(日経平均が1%上昇すれば2%下落)するように設計されている。日経平均が下落した際に利益を出せる性質のため、これまでは株価が高値圏にある時に、逆張り志向の強い個人を中心とした資金が流入する傾向が見られた。
日経平均は2015年前半に「アベノミクス相場」で初めて2万円を突破したが、ダブルインバの純資産総額も同年6月10日に初めて1000億円を超えた。その後、同年夏にいわゆるチャイナ・ショックが発生し、株価は世界的に大きく調整。「逆張り」は成功した。
だが、足元の株高局面では、株価とダブルインバの資産額は逆行している。日本株は、昨年秋以降、世界同時株高の波にも乗り、上昇を継続。新年に入っても上昇は止まらず、日経平均は18日、26年2カ月ぶりに2万4000円台を回復した。
一方、ダブルインバの資産額は、昨年10月31日の1963億円がピーク。17日時点の純資産残高は1517億円とピーク比約23%減少。口数は最大となった同11月9日と比べると約9%減少している。
<「潮目」は昨年11月9日>
「潮目」が変わったのは、昨年11月9日とみられている。同日は海外投資家による資金流入期待が広がる中、朝方は良好な企業業績を評価した買いが継続。寄り付き後まもなく1992年1月以来25年10カ月ぶりに2万3000円台まで上昇した。上げ幅は一時460円を超えた。
だが、後場に入ると先物主導で下げに転じ、日経平均の下げ幅は一時400円に接近。日中値幅は850円超の乱高下となった。このときの急騰局面でダブルインバに対し、個人投資家が損失覚悟の売りを出したとみられている。
松井証券・シニアマーケットアナリストの窪田朋一郎氏は「昨年9月以降の株価上昇時にダブルインバースを買った個人投資家は、11月上旬の株高で痛手を被った」と分析。その後、日経平均は一段と上昇したが、「株高の割には信用売り残は増えていない。ショート・ポジションを取ることに対して警戒感が強い」とみる。
信用取引でも個人の「逆張り」志向の減退が読み取れる。東京証券取引所がまとめた2市場信用取引現在高によると、10月下旬に約1兆1000億円まで膨らんだ信用売り残は、1月12月申し込み現在では9781億円(訂正)にとどまっている。
<「押し目待ちに押し目なし」>
とはいえ、個人投資家も強気ポジションを厚く構築しているわけではない。「順張り型」の日経平均レバレッジ・インデックス連動型ETF<1570.T>も、純資産総額が減少。純資産残高は、17日時点で2225億円と昨年末比で約2%減少。口数は約10%減少している。
「(16年7月の)日銀によるETFの買い入れ増額以降、押し目らしい押し目がない」(松井証券の窪田氏)とされ、レバレッジ型ETFを買うタイミングを見出しにくいことが背景にあるとみられている。
東証と大阪取引所がまとめた週間の投資主体別売買動向によると、個人投資家は1月第1週に日本株を現物・先物合計で7237億円売り越した。この週は2営業日のみだったが、売り越し額は15年7月第3週以来、約2年半ぶりの大きさとなった(翌週は3921億円の買い越し)。
個人投資家の売買には、株式の相続人によるキャッシュ化や、事業家らが保有する株式の放出などが含まれる。IPO(新規株式公開)銘柄への資金流入も反映されないため、実態よりは売り越しに傾きやすいとの指摘もある。ただ、個人の利用が多いネット系証券からは「株価の位置としては高いと感じる個人投資家が多い」との声も聞かれる。
日経平均は昨年9月以降、4カ月余りで5000円近い急ピッチの上昇となっている。「『世界同時景気拡大』の見通しがさらに強まる中で正当化される株高だが、上昇ピッチが相当きつい点は警戒しなければならない」と岡三アセットマネジメント・シニアストラテジストの前野達志氏は指摘する。
順張りか逆張りか、個人投資家にとっても悩みどころとなりそうだ。
*本文10段落目の「9781兆円」を「9781億円」に訂正して再送します。
(長田善行 編集:伊賀大記)