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日本と中国の株買い増し、高値でもまだ欲しい=ジュリアス・ベア
11月22日、スイスのプライベートバンク、ジュリアス・ベアのアジア地域最高投資責任者(CIO)、バシュカール・ラクミナラヤン氏(シンガポール在勤)は、ロイターとのインタビューで、好調な企業業績や政治的不透明感の後退などを背景に、2─3週間前に日本株と中国株の買い増しに動いたことを明らかにした。写真は2016年11月にシンガポールで撮影(2017年 ロイター/Edgar Su)
[東京 22日 ロイター] - スイスのプライベートバンク、ジュリアス・ベアのアジア地域最高投資責任者(CIO)、バシュカール・ラクミナラヤン氏(シンガポール在勤)は、ロイターとのインタビューで、好調な企業業績や政治的不透明感の後退などを背景に、2─3週間前に日本株と中国株の買い増しに動いたことを明らかにした。そのうえで、日本株は高値水準にあるが、まだ買いたいとの意向を示した。
ジュリアス・ベアはスイスのチューリッヒに本拠を置く富裕層向け金融大手で、10月末時点の運用資産は3930億スイスフラン(約45兆円)。
インタビューは、同氏が来日した先週17日、東京で行った。概要は以下の通り。
──秋以降、海外勢の買いがけん引する格好で株高が進んだ。日本株に対する投資判断は。
「当社では1年前から日本株を強気にみている。その後、いったん株式全体のエクスポージャーを少し縮小した。そして最近になって株式のエクスポージャーを再び引き上げた際、特に選好する日本株と中国株を重点的に買い増した。ほんの2─3週間前のことだ」
「日本株に強気な理由はいくつかあるが、最大の理由は好調な企業業績だ。出そろいつつある今回の(7─9月期)決算シーズンでは、市場コンセンサスを上回る決算発表が相次いだ。決算のポジティブサプライズは、株価上昇に最も効く好材料だ」
「われわれは日本と中国の両方で、今後2018年にかけても、決算のポジティブサプライズが大いに期待できるとみている」
──日本については、10月22日の総選挙の結果を好感して、ということもあるのか。
「われわれは特定の政治イベント、政治家や政策に賭けることはしない。しかし、マーケットと投資家にとって、政治の安定は、先行き不透明感の後退という意味でポジティブだ。つまり、日本の総選挙や中国の共産党大会というイベントを無事に通過したことは、日本株と中国株を買い増す判断の決め手ではないが、後押しにはなった」
──日本株は26年ぶり高値をつけ、足元では調整色も出ている。
「記録的高値水準に上昇したのはその通りだが、当社ではここで手放すどころか、まだまだ買いたいと思っている。われわれはいったん投資すると決めたら、少なくとも1─2年はそれを維持することが多い」
「株価の絶対水準を見て、下落を懸念する人はいる。足元で調整色が強まっているのも確かで、われわれもいったん調整局面があるのが自然だとみている。(絶対水準で)割高・割安を言うなら、リスク資産全体が高い。それを割高だと言って拒むならば、投資可能なアセットなど何も残っていない。(絶対水準ではなく)相対的にどうかをみるべきだ」
「企業業績はいったん上向きのモメンタムができれば、世界レベルで重大な変化が起きない限り、その流れは突然変わるわけではない。さまざまな兆候を出しながら、徐々に終息していくものだ。世界経済は数十年ぶりに全ての大陸・亜大陸で安定していて、日本と中国では今なお上向きのモメンタムが見えている。われわれはそれら2つの市場にとどまり続ける正当な理由があると考えている」
──日本株で、特に選好するセクターは。
「これは世界株も含めてだが、われわれはテクノロジー関連が特に有望だとみている。今後グローバルレベルでロボット化が進むことは確実だ。日本メーカーはかつて優れた技術を持ちながらスマートフォンの国際競争に立ち遅れてしまった歴史があるが、同じミスを犯さなければ、このロボット化の流れは日本に非常に大きな恩恵をもたらすだろう。日本企業には明らかにこの分野の技術的優位性がある」
「精密機械系、自動車などもテクノロジーという観点から魅力があると思うが、必ずしも為替の円安を見込んでいるわけではない。当社が3カ月ごとに更新する為替見通しでは、目先のドル/円を112─117円のレンジ推移と予想しており、円高・円安のどちらにも大きく動くとはみていない」
──このところ製造業大手で不祥事が相次ぎ、「メイド・イン・ジャパンの信頼に傷」との指摘もある。日本企業のガバナンスに懸念はあるか。
「どこの国でもそれなりに問題は起きるし、問題が起きれば対策も整備される。最近の不祥事については必ずしもネガティブに捉えてはいない」
「一方で、ガバナンスについてはまだ日本は世界に遅れをとっているのも事実。ただし、自社株買いや配当の継続的な支払いについては目に見えて改善しており、人も企業も正しい方向に向かっている。ROE(株主資本利益率)など世界標準をまだ下回っているのは残念とも言えるが、改善の余地がまだまだあるという意味では良いことでもある」
(1 Japanese yen = 0.0088 Swiss francs)
(インタビュアー:植竹知子 編集:伊賀大記)