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米ホワイトハウス、弾劾調査に協力拒否 「憲法上の手続きに違反」

2019年10月09日(水)10時18分

[ワシントン 8日 ロイター] - 米ホワイトハウスは8日、野党民主党が多数派を占める下院による大統領弾劾調査は憲法が保障する適正手続きに違反していると批判し、「違憲な」調査への協力は拒否すると表明した。

トランプ政権はこの数時間前に、大統領弾劾調査の一環として予定されていたゴードン・ソンドランド欧州連合(EU)大使の下院委員会での証言を突如として拒否し、対立姿勢を鮮明にしたばかり。

ホワイトハウスのシポローネ大統領法律顧問は下院民主党指導部への書簡で、同党の議員らが下院本会議で採決することなく弾劾調査入りを決めたことを批判。「基本的な公平感や憲法が保障する適正手続きに違反する形で弾劾調査を計画し、実施してきた」と指摘し、トランプ大統領に選択の余地を残さなかったと続けた。

「米国民や憲法、行政府、将来の大統領に対する職責を果たす上で、トランプ大統領とその政権は現在の状況下で、党派色丸出しで違憲な弾劾調査に協力はできない」と言明した。

国務省はこれより先、ソンドランド氏の議会証言を認めない考えを示していた。同氏は、トランプ大統領が来年の米大統領選で野党民主党の最有力候補と目されるジョー・バイデン副大統領と息子の調査をするようウクライナに圧力を掛けたとされる疑惑を巡り、下院の3委員会に対し非公開証言を行うことになっていた。

ソンドランド氏は証言に立つため、既に欧州から一時帰国していた。同氏の弁護士は「証言が許されれば、ソンドランド氏は急な要請であっても証言する用意が整っている」と述べた。

トランプ大統領はツイッターへの投稿でソンドランド氏が「共和党の権利が剥奪され、真実が公になることが許されない機能不全のつるし上げの場で証言するところだった」と述べて証言拒否の決定を擁護した。

下院委が先週公表した文書などによると、ソンドランド氏がウクライナに対しトランプ大統領が「デリバラブル(成果物)を望んでいる」と伝えるなど、大統領がウクライナに圧力を掛けたとされる疑惑に関与していたことが明らかになっている。

民主党議員らはソンドランド氏の証言阻止は弾劾調査への妨害行為だとし、今月16日に議会で証言するよう求める召喚状を出した。

ソンドランド氏の証言を土壇場で阻止した理由について国務省に説明を求めたが、応じていない。

シポローネ氏は書簡で、弾劾調査は「むき出しの政治的戦略」で、2016年大統領選の結果を覆し、20年大統領選に影響を与える狙いがあると強調。トランプ氏の適正手続きへの権利を侵害しているとも述べた。

「現在の手続きはあからさまに結論を急ぐもので、民主的に説明可能な権限が付与されず、基本的権利を侵害するなど、この調査の違法で党派色丸出しの目的を鮮明にしている」と主張した。

ミズーリ大学のフランク・ボウマン法学教授は「弾劾調査は民主党が望む手順で進めることが可能」としながらも、「政治的観点から確実に言えることは、どこかの段階で大統領側の代理人の参加を認めることが有用になる」とした。

クリントン元大統領の弾劾調査では、下院はクリントン氏の弁護団が証拠や証言について反応を示し、証人喚問を要請することを認める手続きを採用した。

トランプ政権の高官は記者団との電話会見で、今回の弾劾調査では、証拠を確認し、証人を反対尋問し、公聴会に弁護士が出席するなどの過去の弾劾調査で認められた手続き上の権利が確保されていないと指摘した。

11日には、5月に解任されたマーシャ・ヨバノビッチ元駐ウクライナ大使が下院委で非公開で証言する見通し。

さらに、上院司法委員会のグラム委員長(共和党)はこの日、トランプ大統領の顧問弁護士ジュリアーニ元ニューヨーク市長に証言を要請する方針を示した。

グラム委員長はツイッターへの投稿で「上院がウクライナに絡む汚職や不正行為に関し調査を開始する時だ」と述べた。ジュリアーニ氏の証言日程など、詳細には踏み込まなかった。

また、関係筋によると、1人目の内部告発者が早ければ週内にも議会以外の場所で弾劾調査担当者と面会する方向で、内部告発者の弁護士と議会関係者の間で合意に近づいている。1人目の内部告発者の弁護士はこれまでに上下両院の情報委員会と連絡を取っているという。

※内容を追加しました。

ロイター
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