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アングル:香港の株式市場に復調の兆し、不動産も安定

2019年10月06日(日)15時00分

Julie Zhu Noah Sin Marius Zaharia

[香港 3日 ロイター] - 政府に抗議するデモ隊と警官隊との激しい衝突が続く香港。しかし、街の別の一角では、銀行関係者のグループが、バドワイザーのアジア子会社による大規模な新規株式公開(IPO)について打ち合わせにいそしんでいた。

抗議活動が拡大し、数カ月の停滞を強いられていた香港市場が、復活の兆しを見せている。不動産への投資意欲は衰えておらず、企業の上場計画もめじろ押しだ。

バドワイザー・ブリューイング・カンパニーAPAC<1876.HK>が先月末に香港で実施したIPOの資金調達額は約50億ドルと、今年これまでに世界で実施されたIPOの中で2番目の大きさとなった。

銀行関係者によると、10月中に大企業の少なくとも3社が香港上場を計画しており、合計30億ドル相当以上の株式を公開する見通しだ。

香港は世界第2位の経済大国である中国と全世界との、資金の流出入を結ぶ玄関口だ。

「中国にプレゼンスがあり、しかも拡大している良質な資産への投資に、これ(抗議活動による混乱)がどう影響するというのか。香港での抗議活動とは何ら相関を持たない」と話すのは、世界的な投資銀行の上級職員だ。

「『香港でこんなことが起こっているからIPOは止めるべきだ』などという電話は一本も受けた覚えがない」。

リフィニティブのデータによると、企業が1─9月に香港上場によって調達した資金は総額150億ドルで、ニューヨークに次ぎ世界2番目の規模だった。

抗議活動は観光や小売りに打撃を与え、香港は10年ぶりに景気後退に陥る恐れが出ている。しかし銀行関係者やアナリストは、巨大な中国市場への近さと、香港上場企業の中国でのプレゼンスの方が重要だと話す。

香港の株価は当初下落したが、既に落ち着く兆候を見せている。 主要株価指数のハンセン指数は先月約1.4%上昇した。もっとも抗議活動が始まった6月半ば以来ではなお6.1%下落している。

アナリストによると背景には、中国政府が国内唯一のオフショア金融センターである香港の将来を脅かすような措置に出ることはない、との期待もある。

ナティクシスのエコノミスト、ギャリー・Ng氏は「問題は、人々が香港に代わる投資先があると考えるかどうかだ。香港は今も大きな投資家層を抱えている」と話した。

ウェブサイト上の情報によると、9月の香港取引所へのIPO申請件数は40件で、3月以来で最多となった。

先週はバドワイザーAPACのほか、中国系のスポーツ用衣料企業トップスポーツ・インターナショナル・ホールディングスが香港上場で12億ドルを調達した。

銀行関係者によると、IPOに投資した政府系ファンドなどの機関投資家にとって魅力となったのは、割安になった株価や長期的な事業の有望性だ。

バドワイザーは7月にいったん棚上げした上場を先月末に実施し、公開価格を参照レンジの下限に設定した。

一方、中国の電子商取引大手アリババ・グループは8月に香港上場を延期した。

抗議活動の影響は不動産市場でもほとんど見られない。不動産会社ウィーロックは8月末以来、開発中のマンション816戸の80%を販売した。今年実施した他の分譲案件に比べれば低い割合だが、現在の環境に照らせば「なお上々だ」と不動産代理店は評価している。

ロイター
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