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米卸売物価、8月は前月比+0.1% 利下げ見通し変わらず

2019年09月12日(木)00時19分

[ワシントン 11日 ロイター] - 米労働省が11日発表した8月の卸売物価指数(PPI、最終需要向け財・サービス)は、前月比0.1%上昇と、市場予想の横ばいを上回った。モノの価格が低下したものの、サービス価格が上昇したことが背景。ただ、米連邦準備理事会(FRB)が来週、景気減速に対処するために追加利下げするとの見方は変わらなかった。

7月は前月比0.2%上昇していた。8月の前年同月比は1.8%上昇。市場予想は1.7%上昇だった。前月は1.7%上昇していた。

ムーディーズ・アナリティクス(ペンシルバニア州)のシニアエコノミスト、ライアン・スイート氏は「8月の卸売物価統計はわれわれの金融政策の見通しを変えるものではなかった」とし、「米中貿易戦争に起因する見通しに対する下方リスクが存在しているため、FRBは今月のFOMCで利下げを決定するとなお予想している」と述べた。

食品とエネルギー、貿易サービスを除いたコア指数は前月比0.4%上昇し、前月の0.1%下落からプラスへ転じた。前月は2015年10月以来の値下がりだった。8月の前年同月比は1.9%上昇。前月は1.7%上昇していた。

FRBが物価の目安としているコア個人消費支出(PCE)価格指数の前年同月比は7月に1.6%上昇と、FRBの物価目標である2.0%を下回った。今年は目標に届かない状態が続いている。

米中貿易摩擦が続く中で景況感が悪化し、米国内外で製造業が低迷している。金融市場はFRBが17─18日の連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げすることを完全に織り込んでいる。

米国は今月から、追加関税を課す中国製品の対象を広範囲に及ぶ消費財に拡大した。製造業低迷がより広く経済に波及し、11年間続いている景気拡大に悪影響を及ぼすとの懸念がある。経済は現在、好調な労働市場に伴う底堅い個人消費が下支えしている。

8月のPPIの内訳は、エネルギーが2.5%下落。前月は2.3%上昇していた。8月はガソリンが6.6%下落し、1月以来の大幅なマイナスとなった。前月は5.2%上昇していた。

モノは0.5%下落と、こちらも1月以来の大幅な落ち込みだった。前月は0.4%上昇していた。8月のモノの値下がり要因はエネルギーが80%以上を占めた。食品は0.6%下落。前月は0.2%上昇していた。モノのコア指数は横ばい。前月は0.1%上昇だった。

モノのコア指数は対中関税措置に起因するインフレ圧力にもかかわらず抑制されている。キャピタル・エコノミクス(ニューヨーク)のシニア米国担当エコノミスト、マイケル・ピアース氏は「中国人民元相場の下落のほか、中国製品に代わりアジアの他の国の安価な製品に需要が移っていることで、関税措置によるインフレに対する影響が相殺されている可能性がある」と述べた。

サービスは0.3%上昇した。前月は0.1%下落していた。8月は宿泊が6.4%上昇し、全体水準を押し上げた。09年4月以来の大幅な伸びだった。

医療サービスは0.2%上昇した。前月は0.1%上昇していた。うち入院費は0.4%上昇。診察費は0.5%上昇し、前月の0.5%下落からプラスへ転じた。外来費は0.1%下落した。

資産運用管理費用は0.5%上昇。前月は0.8%上昇していた。資産運用管理費用と医療費用はコアPCE価格指数に組み入れられる。

ロイター
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