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第一生命、5月以降に株売却・ヘッジ外債にシフト 米中対立激化で

2019年09月03日(火)15時58分

[東京 3日 ロイター] - 第一生命保険<8750.T>が今年5月以降、2度にわたって運用方針を大幅に見直し、リスク回避型ポートフォリオにシフトしたことが分かった。ロイターの取材に対し、投資本部長の重本和之執行役員が明らかにした。米中間の貿易摩擦が収束の兆しを見せないまま泥沼化の様相をみせていることを受け、株式へのエクスポージャーを縮小して円高リスクをヘッジした外債投資を増やしている。

第一生命では、運用方針の微調整は毎月実施しているが、相場のトレンドを表す波の形自体(相場シナリオ)の想定を大幅に変えるのは、2015年8月の中国人民元ショックや2016年11月の米大統領選でトランプ氏が当選したとき以来のことだという。

同社は4月時点では、米中貿易交渉が6月あたりで合意するとのシナリオを描いており、ドル円も株も金利も上方向(上昇)を予想。ただし景気サイクル的に年度後半はマーケットの堅調さの継続は厳しいとみていた。しかし、5月の10連休明けにトランプ米大統領が対中関税の引き上げを発表したことを受け、状況が一変したと判断。そこで、5月に各アセット運用責任者で協議し「年度前半はマーケットが徐々にピックアップする」としていた従来の展望を、「しばらくは横ばい、その後下がる」へと変更した。

さらにFOMC翌日の8月1日、トランプ米大統領が、今度は9月から3000億ドル相当の中国製品に10%の関税をかけると宣言したことから、再び「年度後半は横ばいではなく、下方向へ」とシナリオを下方修正したという。

早くから米国がリセッション入りするリスクに着目していた第一生命だが、重本投資本部長は「今年は、リスクシナリオとして想定していたシナリオの方がどんどん実現してしまい、それに伴って運用方針を次々に切り替えた格好」だと振り返った。

具体的には、「ドル円・株・金利とも上方向はないとの見方であるため、株式は売りで利益確定、金利(債券)はロング(買う)、為替はヘッジをかけるという投資行動をとった」と説明した上で、8月末にかけて、既にこうしたリスク回避型へのポジション変更が奏功し始めたと明かした。

また、ヘッジコスト控除後でもまだプラスの利回りが確保できる米国社債については、「クレジットに強気見通しを持っていない」として、ハイイールド債には投資しない意向を示した。

伝統的資産以外では、「価格変動リスクはあるが、円で3%の利回りが得られる投資対象は他になかなかない」との理由から、不動産への投資も積極化している。

従来はオフィスを中心に手がけてきた同社だが、足もとでは物流施設から生活密着型商業施設、首都圏のマンションや再開発案件などに幅広く取り組んでいると述べた。

重本氏は、米中貿易戦争の先行きについて、「お互い(米国と中国)どこまでも景気を悪くするわけにはいかないので、今後何らかの手打ちはあるだろうが、景気が(貿易問題が起きる前の水準まで)持ち直すまでには至らないのではないか。そうなると、なかなか上向きのシナリオは描きにくい」とし、当面はリスク回避型のポートフォリオを維持する可能性を示唆。

その上で、「仮に、貿易問題が片付いたり、米中独が財政政策を打ち出すといった話が出てきたりすれば、また少し世界が変わる可能性がある。そうなれば、もう1回リスクを取れるようになる可能性はある」との見方を示した。

(植竹知子)

ロイター
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