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アングル:香港キャセイ航空社員がおびえる中国「恐怖政治」

2019年08月22日(木)16時06分

[香港/シンガポール 20日 ロイター] - 中国は政治弾圧や解雇、スマートフォンの検査など、「白色テロ」を仕掛けてきている──。香港デモを巡る中国政府の対応に、キャセイ・パシフィック航空<0293.HK>の操縦士や客室乗務員らが恐怖を募らせている。

キャセイは中国の要請に応じ、デモに参加した操縦士2人を解雇したのに続き、ルパート・ホッグ最高経営責任者(CEO)が先週辞任した。

民主派弁護士でもある別の操縦士ジェレミー・タム氏は20日、内部の政治圧力に耐えかねて自身とその他従業員が退職したと明かした。同氏は自身のフェイスブックのページに「(中国民用航空局が)香港に手を伸ばし、地元航空会社に直接圧力をかけたことは、紛れもない白色テロだ。政治裁判のせいで、第一線で働く社員からCEOまでが退職した」と記した。

白色テロとは、権力者側による敵対勢力への直接行動を指すもので、香港では恐怖感を生む匿名行動を表すのによく使われる表現だ。

従業員8人へのインタビューと、従業員専用の2種類のフェイスブックページへの投稿によると、ホッグCEOの辞任は、従業員2万7000人の同社全体を恐怖に陥れたという。

地域子会社キャセイ・ドラゴンの客室乗務員は「わが社で白色テロが起こっている。私たちはちょっとしたおしゃべりですら、政治的な話をするのを非常に警戒している」と話す。

「中国政府寄りの人々の中には、ソーシャルメディア上でデモ支持者を発見しては、住所や電話番号などの個人情報をテレグラム上に作ったグループにアップしている人たちがいる」という。テレグラムとはメッセンジャーアプリだ。

中国民用航空局は9日キャセイに対し、中国本土行きの航空便の乗務員について身辺情報の申告を義務付けるとともに、デモに関わった職員が本土での運航に携わるのを禁じると通知した。

従業員5人によると、それ以来本土に着陸する乗務員は当局からかなり踏み込んだ形の検査を受けている。

ある操縦士はロイターへのテキストメッセージで、「検査員は操縦士と客室乗務員のスマホを調べ、反中国の素材がないか、ワッツアップのメッセージやフォトアルバムまでチェックしている」と打ち明けた。

客室乗務員の1人は電話でロイターに対し、会社が操縦士2人を解雇したことに従業員は当初怒りと失望を感じていたと説明。しかしその後、「社が中国からどれほど圧力を受けているかが分かって以来、私たちは怒るのを止め、同情を感じるようになった。社は中国のご機嫌を取る必要があるのだと分かった」。

他の社員3人は、多くの乗務員は中国便を避けようとしているとした上で、何か発言すればそれが会社の上層部や中国側に漏れるのではないかと恐れていると話した。

ある客室乗務員は「旅行客から香港で起こっていることについて質問されたら事実関係だけを伝え、中立を保つようにしている。私を『告げ口』する口実に使われたくないから。中国人観光客はそこら中にいる」と語った。

ロイターは、キャセイ本社や空港の周辺などで通りすがりの社員など十数人に取材したが、中国政府の行動を支持すると答えた社員は1人もいなかった。

キャセイの従業員らが利用するフェイスブックのページには今、今回の危機への対処法について意見交換するメッセージがあふれかえっている。大半は忠誠と沈黙を訴える内容だ。

「キャセイの今日は香港の明日だ。今の仕事を守るためには黙って妥協を続けるしかない」という声が聞かれた。

一方で、抵抗のための結束を呼びかける投稿もある。

「残念ながら会社は存続するために屈服せざるを得ないが、われわれはその必要がない。人々の信頼を回復すべく、いつも以上に結束を固めるべきだ。そうしなければ2万7000人全員が路頭に迷いかねない」

ロイター
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