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アングル:奴隷船から400年、アフリカに残る現代奴隷の痛み

2019年08月14日(水)12時27分

Angela Ukomadu and Nneka Chile

[ラゴス 7日 ロイター] - 住み込みの無給メイドとして、ナイジェリアの首都アブジャに住むある家族に預けられることが決まった時、ブレッシングさん(仮名)はわずか6歳だった。学校に通わせてもらうという約束で、母親が預けたのだ。

ナイジェリア南西部にある故郷の町では、母親は3人の子を食べさせるのに十分な稼ぎがなかった。

だがアブジャでの生活が始まると、預け先の家族はブレッシングさんを一日中働かせ、仕事を忘れれば電線でむち打ち、腐った残り物を食べさせた。

母親はその後、娘の近くに住むためアブジャに移ったが、ブレッシングさんは母親が訪ねてきても2人きりで会うことは許されなかった。

「母親が来るが、何をされているか言ってはいけない、そもそもしゃべってはいけないと言われた」と、ブレッシングさんは打ち明ける。

「どうしているのと母に聞かれたら、元気でやっていると答えろと言われた」

記録に残る最初のアフリカからの奴隷が北米に到着してから、ちょうど今年で400年になる。だが奴隷は、今日の問題でもある。4000万人以上の人が、強制労働や強制結婚、その他の性的搾取の環境に囚われていると、国連は推計している。

現在11歳になったブレッシングさんも、そうした被害者の1人だ。隔離と虐待が2年続いた後の2016年、ブレッシングさんは人身売買の問題に取り組む団体「WOTCLEF」に救出され、今も同団体の保護下にある。ロイターは、WOTCLEFの許可を得てブレッシングさんを取材した。

人権団体「ウォーク・フリー・ファンデーション」と国際労働機関(ILO)が出した2017年の報告書によると、「奴隷」が最も多いのはアフリカで、1000人あたり7人が被害者となっている。この報告書は、奴隷を、「ある人間が、脅しや暴力、強制やいつわり、そして権力の乱用によって、拒否したり去ったりできない搾取的状況」と定義している。

ほかの仕事があると思い込まされて売春させられる例は、最も広範にみられる悪質な現代の奴隷の1形態だ。

クラウディア・オサドロールさん(28=仮名)とプログレス・オモビエさん(33)の経験は、貧困がいかに女性を搾取されやすい状況に陥れるかを物語っている。

ナイジェリア南部ベニンシティに住んでいたオサドロールさんの家族は家計が行き詰り、オサドロールさんは大学を中退。誰かが就職を世話してくれ、渡航費も支給されると従妹から聞かされ、ロシア行きを決めた。2012年6月、知らない少女3人と共にナイジェリアを後にした。ロシアに着くと、「マダム」と呼ばれる人が迎えに来ていた。

オサドロールさんは売春を強制され、1日最大20人もの相手をさせられて、傷を負ったという。3年間拘束され、その間2週間に一度「マダム」がやって来てオサドロールさんのお金をほとんど取り上げていった。

地下鉄の駅で偶然、国際移住機関(IOM)の職員と出会ったことをきっかけに脱出したオサドロールさんは、トラウマや逃げ出せた時の安堵感について泣きながら語った。

「家族のために一番大きな犠牲を払ったと思う。でも、生きて帰ってこれたことを神に感謝する」と、彼女は話した。

オサドロールさんは、ナイジェリアの慈善団体の支援で仕立て業の訓練を受け、ベニンで社会復帰することができた。

一方、2015年に仕事を求めてナイジェリアを出たオモビエさんも、奴隷にされた。借金して作った70万ナイラ(約20万円)を業者に支払い、サハラ砂漠を通ってリビアに密入国した。最終的には欧州に渡るつもりだった。

オモビエさんのようにアフリカから脱出する人の最終目的地は欧州であることが多いが、そこまでたどり着ける人はわずかだ。リビアに入った段階で当局に拘束されたり、契約労働者として売られてしまう人が多い。支援団体によると、「奴隷市場」で売られる例もあるといい、数百年も昔のサハラ砂漠の奴隷貿易さながらだ。

リビアに着いたオモビエさんは、トリポリの裕福なアラブ人家庭で、長時間の清掃の仕事を始めた。お腹が空っぽの状態のことも多かった。

「3カ月働いたのに、給料をもらえなかった」と、オモビエさんは言う。

別の業者が、イタリアへの渡航を助けてくれると約束したが、オモビエさんはリビア沿岸で警察に捕まり、6カ月間拘束された。移民や難民を支援する国のプログラムを使ってナイジェリアに帰国できたのは、この7月だった。

(翻訳:山口香子、編集:宗えりか)

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