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利下げに「極めて慎重」、金利据え置きの論拠強い=ハルデーン英中銀理事

2019年07月24日(水)01時01分

[スカンソープ(英国) 23日 ロイター] - イングランド銀行(英中央銀行)チーフエコノミストのハルデーン理事は23日、英経済は現在フル稼働状態にあり、成長に向け中銀の刺激策に依存することはできないため、景気が急激に悪化しない限り利下げには極めて慎重でありたいという立場を示した。

ハルデーン理事は英北部のスカンソープで行った講演で、このところの経済指標には英国の欧州連合(EU)離脱に起因する振れが反映されているが、同時に消費者信頼感と労働市場は堅調に推移しているとし、英国の状況は米国、およびユーロ圏とは異なると指摘。EU離脱を控え企業投資が大幅に抑制される中、英経済は第2・四半期は失速すると予想されるとしながらも、「景気が急速に悪化しない限り、個人的には金融緩和に対し極めて慎重でありたいと考えている」と述べた。

その上で、EU離脱を巡る不確実性が存在しているため、現時点では金融政策を変更しないことを望むとし、「先行きの明確性が増すまで金利を据え置く論拠は強い」と述べた。

次期英首相に就任するボリス・ジョンソン氏は条件などで合意しないままEUを離脱する可能性を排除していないが、ハルデーン理事は、合意なき離脱が現実のものとなっても中銀は自動的に利下げに動くことはないとし、中銀がこれまでも示してきた姿勢を改めて強調。「合意なき離脱で英ポンド相場が急落し、インフレ期待が急上昇したとしても、金融政策委員会(MPC)が物価を巡る責務の達成を目指す場合、市場の予想通りに利下げを実施できるかは分からない」と述べた。

また、市場は2008年の金融危機以降、超低金利環境に過度に慣れ切っていると指摘。金融政策が過去の呪縛に囚われることがあってはならず、初期の対応に金融政策が利用されることも、金融政策に対する依存が高まることもあってはならないとし、「現時点ではサプライサイドの強化が必要となっている」と述べた。

ハルデーン理事は講演後、英中銀はEU離脱が英経済にもたらす影響に柔軟、かつ迅速に対応する必要があるとの考えを表明。10年前の金融危機とEU離脱は「異なる」とし、「このことは金融政策が通常よりも柔軟で迅速である必要があることを示している」と述べた。

ロイター
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