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アングル:ドル安望むトランプ氏、ドル売り介入の現実味は
[ワシントン/サンフランシスコ 18日 ロイター] - トランプ米大統領は今月、通貨安を誘導しているとして他国を非難し、ドル安を望む姿勢を強調した。これを受け、大統領がドル売り介入に動くとの見方が強まっているが、他国の反発や市場の混乱を招く恐れがあるほか、議会から独立している米連邦準備理事会(FRB)の助けなしに大幅なドル安誘導が可能かどうかも定かでない。
ドル相場は現在、数十年ぶりの高水準で推移しており、国際通貨基金(IMF)が17日公表した報告書によると、ファンダメンタルズで正当化される水準より少なくとも6%過大評価されている。
<ドル安誘導の手段>
ドル安誘導のためのトランプ大統領の口先介入は、これまで効果を発揮してきたが、最近では効き目が薄れている。
さらにドルを押し下げるため、米財務省は保有しているドルを売ることが可能だ。こうしたドル売り介入は、導入されたばかりのユーロが暴落するのを阻止するための国際協調介入の一環として、2000年9月に実施されて以来、行われていない。
米国の準備金1260億ドルの大半は為替安定化基金(ESF)に入っている。しかし米国の一方的な措置により「通貨戦争」が起こった場合には、これでは足りないかもしれない。「より大きな力を持つヘッジファンドが数多くある」とキャピタル・エコノミクスのエコノミスト、ポール・アッシュワース氏は言う。
中国の外貨準備は3兆1000億ドルに上る。世界の外為市場では1日に5兆ドル前後の取引が行われている。
米財務省は、為替介入を検討しているかどうかについてコメントを避けた。
米財務省が金融市場に介入する際には連銀が実働部隊を務めており、過去の介入では両機関が協力してきた。財務省はより大規模な介入を行うため、無制限にドルを生み出せる潜在力を持つFRBに軍資金を要求する可能性がある。
ピーターソン国際経済研究所のフェロー、ジョゼフ・ギャノン氏によると、米政権は議会に追加資金へのアクセスを要求する可能性もある。その場合、外貨買いの資金を増やせるよう、連邦債務の法定上限を引き上げる可能性も出てくる。「債務上限を撤廃すれば、米国が通貨戦争に勝てるのは明らかだ」(ギャノン氏)
<FRBの独立性>
FRBの協力を仰ぐこと自体も難題だ。FRBは物価安定と完全雇用および穏やかな長期金利という、議会から与えられた責務を果たすために金融政策を運営している。
ドルが下落すれば輸入物価が上昇し、2%のインフレ率目標の達成に役立つ可能性はある。しかしドルを押し下げるための市場介入は、経済的な目的で為替レートを目標にしないという、13年の先進7か国(G7)の合意に反することになるだろう。
外交問題評議会のフェロー、ブラッド・セットサー氏は「日銀や欧州中央銀行(ECB)を敵に回すような、一方的な行動をFRBが起こそうとするだろうか」と語った。
<ファンダメンタルズ>
仮に無制限のドル売り介入を行ったとしても、米政府がドル相場をコントロールできるかどうかは不明だ。ドル相場は、米経済の強さや他通貨と比較したドルの魅力を反映しているからだ。
コーネル大の貿易政策専門家、エズウォー・プラサド氏は「ドルの価値を押し下げるため介入主義的な政策に出ても、マクロ経済のファンダメンタルズに圧倒されるだろう」と述べた。
<利下げ>
FRBは今月利下げを実施し、その後も来年あたりにかけて何度か追加利下げを行うと予想されているため、いずれにせよドルは下がりそうだ。
米経済の成長率は今後減速し、欧州との差が縮まるとの見方が多い上、米国の財政赤字拡大もドルを圧迫する可能性がある。
CMEグループのエコノミスト、エリック・ノーランド氏は「金融政策自体が、まず間違いなくドルを押し下げそうだ」と話した。