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ECB総裁、物価低迷なら再び緩和 米大統領「不公平」と反発
[シントラ(ポルトガル) 18日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は18日、物価の伸びが低迷し、目標を達成できない状況が続いた場合、ECBは利下げや資産買い入れなどの金融緩和を再度行うと明言し、物価押し上げへの決意を表明した。これに対し、トランプ米大統領は「不公平」だとして反発した。
ECBは4年近くに及んだ量的緩和(QE)を昨年末終了させたばかり。足元の金利は過去最低水準にとどまっているほか、バランスシートは4兆7000億ユーロ(5兆3000億ドル)に膨らんでいる。新たな刺激策がどれだけの効果をもたらすかは不透明だ。
ドラギ総裁はポルトガルのシントラで開催されたECBの年次会議で「改善がなく、インフレ率が持続的に目標に戻る動きが脅かされれば、追加的な刺激が必要になる」と指摘。その上で「責務達成に向け、責務の範囲内であらゆる柔軟性を活用する。将来、物価の安定に課題が生じた際も同様に活用する」と明言した。「金融政策は引き続き目標達成にコミットしており、過度に低いインフレ率に甘んじるものではない」とも強調した。ECBは2013年以降、インフレ目標を達成できていない。
政策手段については、一段の利下げや金利ガイダンスの調整が可能であるほか、追加の資産買い入れも依然「かなりの余地」があると発言。「政策金利の一段の引き下げと副作用抑制措置は、依然としてわれわれのツールの一部だ」と語った。またマイナス金利の副作用を抑えるための措置を取ることも可能とし、金利階層化に含みを残した。
さらに、成長のリスクは下向きに傾いており、先行きに関する指標もさえない中、「今後数週間」かけて種々の選択肢を検討すると表明し、ECBとして比較的早期に行動する可能性を示唆した。
ECBは、特定国の国債買い入れ上限を発行残高の3分の1とするなど、債券買い入れプログラムに制限を設けているが、総裁は、こうした制限は状況に応じて調整する必要があると主張。欧州司法裁判所がECBのツールについて幅広い裁量権をすでに認めていると指摘した。
市場はドラギ総裁の発言を予想外にハト派的と受け止め、ユーロが対ドルで下落、株式は当初の安値から戻し、債券利回りは一段と低下した。
トランプ大統領はドラギ総裁の発言について、米国に対する不公平な競争につながる可能性があると批判。「ユーロの下落で欧州は不当に容易に米国と競争できるようになる。欧州は中国などと同様、長年にわたりこうしたことをしてきた」とツイッターに投稿した。
ドラギ総裁は、トランプ氏の投稿について質問され、ECBの責務は物価安定で、為替レートを目標としていないと説明した。
市場はすでにECBの中銀預金金利(マイナス0.40%)が15─20ベーシスポイント(bp)引き下げられるとの見方を織り込んでいる。
ノルデアのエコノミスト、ヤン・フォンゲリッヒ氏は「政策の選択肢が依然あるというECBの主張はもっともだが、問題はそうした政策で金融緩和がさらに大きく進むのかということだ」と述べた。
*内容を追加しました。