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アングル:米民主党のバイデン氏、急な左旋回で迷走気味
James Oliphant
[ワシントン 7日 ロイター] - 4月に2020年米大統領選挙への出馬を表明した民主党のジョー・バイデン前副大統領は、民主党の候補指名獲得に向けてこれまで極めて順調に選挙戦を進めてきた。しかしこのところ中絶や気候変動などの課題で急に左派寄りの姿勢を打ち出し、迷走気味だ。
バイデン氏の選挙陣営は、同氏がトランプ大統領と積極的に絡んだり、個別の対応策よりも政策の大枠を示すことで、「この人以外あり得ない」という雰囲気を醸し出す戦略に成功。ロイター/イプソスの最近の世論調査では民主党と無党派層の支持率が31%とトップに立ち、2位のサンダース上院議員の14%を引き離している。
ただ、政策面の立ち位置をはっきりさせなければならないケースが増えるにつれて党内左派の「進歩派」からの攻撃にさらされ、こうした勢力の要求を飲む意向を見せており、より穏健な有権者の離反を招く恐れがある。
バイデン氏は6日、連邦政府の資金を中絶に充てることを禁じる「ハイド修正条項」について、突如反対を表明。カトリック教徒であるバイデン氏はこれまで40年間、同条項を支持してきた。
また温暖化対策を巡っても、労組や産業界の懸念を和らげようとして中道寄りの路線を取っていると進歩派から批判されたことを受けて、4日に大方の予想より踏み込んだ内容の温暖化対策を打ち出した。
いずれの政策も中高年・中道という最も強固な支持基盤ではなく、改革派や進歩派、ミレニアル世代など、票固めに欠かせない、党内で発言権を増している層を標的にしている。
気候変動や中絶の問題でバイデン氏批判の急先鋒となっているのは、大統領選に出馬していない民主党のオカシオコルテス下院議員。カマラ・ハリス上院議員やエリザベス・ウォーレン上院議員ら、支持率上昇を狙う他の立候補者からも攻撃を受けている。
バイデン氏がアトランタの集会で、ハイド修正条項への立場を一転させたことに謝罪しないと述べたことは、この問題についての同氏の立ち位置を巡って戸惑いを引き起こした。バイデン氏はジョージアなどの州で中絶を禁じる厳しい法律が可決されたことを転向の理由に挙げたが、ツイッターなどには進歩派からバイデン氏の発言に対する批判が相次いで投稿された。
一方、再選を目指すトランプ大統領陣営の関係者は先月、民主党の予備選が進むにつれてバイデン氏は左寄りの軌道を取るとの予想を示し、その場合にはこの点に付け込む用意があると述べた。
バイデン氏は6日のニューハンプシャーの集会で、上院議員として1994年に成立を支援した犯罪法を擁護し続けた。ハリス氏ら他の候補は、この法律によって、アフリカ系米国民の投獄が不釣り合いに多くなったと批判している。
バイデン氏はまた、トランプ氏に対する弾劾尋問についてもトランプ氏が委員会の調査を妨害した場合に限るべきだとして、他の民主党候補とは異なる姿勢を取っている。
バイデン氏が左旋回によって何らかのダメージを受けるかどうかはまだ分からない。ただニューハンプシャー州の一部有権者の間からは、党内進歩派におもねってほしくないとの声が聞かれた。
ニューハンプシャー州ウェアのジェフ・ブラウンさん(57)は「はっきり言って、進歩派はさまざまな手段で民主党を乗っ取っている。私たち中道派の60%から70%が取り残されている」と述べた。その上で「バイデン氏は私たちの声に耳を傾けているし、私たちの意見を代弁していると思う」と話した。