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焦点:米中貿易摩擦が曇らす米小型株の「回復シナリオ」
Sinéad Carew
[ニューヨーク 20日 ロイター] - 深刻化する米中貿易摩擦によって、米国の小型株は大型株を上回る株価下落に苦しんでおり、経済成長の見通しが改善しなければ、年後半の先行きはさらに厳しくなる恐れがある。
市場は2019年下半期のS&P600小型株指数<.SPCY>が上昇軌道に戻ることを予想していたが、世界の2大経済大国の貿易摩擦が激化する中で、こうした期待に水を差されている。
大企業ほど海外売り上げに依存していないため、貿易摩擦に対して小型株はそれほど脆弱ではないと考える投資家もいる。
しかし、関税引き上げにより輸入価格が急騰して、米国の経済成長が鈍化する事態に陥るならば、大規模な多国籍企業よりも財務余力の少ない中小企業が受けるダメージは大きい。米国企業の多くは海外サプライヤーを使っているため、関税引き上げによって輸入品が割高になる可能性がある。
「国内売上比率が高いからといって、完全に守られている訳ではない」とバンクオブアメリカ・メリルリンチでストラテジストを務めるジル・キャリー・ホール氏は語る。「貿易問題において解決策が見いだせないのであれば、必ずしも小型株を持ちたいとは思わないだろう。リスクオフ環境では不利に働く傾向がある」
トランプ米大統領が5日、2000億ドル(約22兆円)相当の中国製品に対する関税を10%から25%に引き上げるとツイッターで表明してから、S&P600は5.4%、ラッセル2000小型株指数も4.9%下落した。対するS&P総合500種<.SPX>は2.9%の下落にとどまっている。
1つの問題は、トランプ大統領のツイート投稿から、関税引き上げが発効した10日までの間に、輸入依存企業が在庫を積み増す時間がなかったことだ。
米政府がさらに約3000億ドル相当の中国製品に対して最大25%の追加関税を適用すれば、負担はさらに重くなる。
市場はすでに、S&P600構成企業の上半期における収益低迷を予想している。
リフィニティブのアナリスト、デービッド・アウレリオ氏が算出したIBESデータによると、第1・四半期の1株当たり利益(EPS)は平均で18%の減少、第2・四半期も9%の低下が予想されている。
ジェフェリーズの株式ストラテジスト、スティーブン・デサンクティス氏は、第1・四半期について「小型株にとって2009年以来最悪の決算になる」と警鐘を鳴らす。
アナリストはS&P600構成企業の第3・四半期EPSが6.9%増、第4四半期は23.3%増になると見込んでいる、とアウレリオ氏は指摘。
一方、貿易摩擦が解決する兆しが見えない中、米金融市場は下半期について楽観的すぎる、と貿易戦争の長期化を予想するジェフェリーズに所属するデサンクティス氏は語る。
「小型株が回復して、再びアウトパフォーム軌道に乗るには下半期の経済指標が改善傾向を示す必要がある。そうなれば第3、第4・四半期における業績改善につながるだろう。それが市場が期待していることだ」と同氏は語る。
ただ実際には、債券市場とフェデラルファンド(FF)金利先物トレーダーは、その正反対の経済減速を見込んでいる。
「下半期に状況が良くならない可能性の方が絶対に高い」とデサンクティス氏は語る。
経済成長が改善するには、米消費者支出の堅調さが持続される必要があると同氏は指摘。貿易摩擦によって企業の先行き不透明感が強まることで弱まる設備投資を、個人消費が埋め合わせる必要性があると述べた。
確かに、労働市場はまだ力強く、賃金も上がっているが、それだけでは不十分かもしれない。
「使えるお金を人々が持っていることが大事だ」とデサンクティス氏は言う。しかし関税で消費財価格が上昇すれば、小型株は苦境に陥ると付け加えた。「実際に価格が急騰し始めれば、人々は自身の消費パターンをより真剣に見直すだろう」
(翻訳:宗えりか、編集:下郡美紀)