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米中通商協議が終了、トランプ氏「建設的」と評価 摩擦激化の恐れも

2019年05月11日(土)09時08分

[ワシントン 10日 ロイター] - ワシントンで開かれていた米中通商協議は10日、2日目の会合が終了した。ムニューシン財務長官は中国との話し合いは「建設的」だったとし、トランプ大統領も「率直かつ建設的な対話ができた」と評価した。ただ米政府がこの日2000億ドル相当の中国製品の追加関税率を25%に引き上げる中、協議が事実上物別れに終わったことで、今後両国の貿易摩擦がエスカレートする可能性もある。

米国は、中国からの2000億ドル相当の輸入品に対する関税を10%から25%に引き上げた。米東部時間10日午前0時1分(日本時間同午後1時1分)から適用され、5700品目以上が対象となった。中国は具体策は示していないものの、対抗措置に動く構えを鮮明にしている。

こうした中、この日2日目を迎えた米中通商協議では、ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表とムニューシン財務長官が、ワシントンを訪問中の劉鶴・中国副首相と約90分にわたり会談した。

ムニューシン財務長官は中国との話し合いは「建設的」だったと評価。また中国の劉鶴副首相はブルームバーグに対し、協議は「極めて良好」だったと語った。

中国共産党系メディアの環球時報はツイッターへの投稿で、政府筋の情報として、将来的に北京で協議を再開することで双方が合意したと報じた。

トランプ大統領はこの日発信した一連のツイッターで、中国と合意にこぎ着けることを「全く急いでいない」と言明。さらに、関税は従来型の貿易協定よりも一層大きな恩恵を米経済にもたらすとし、対中関税引き上げを正当化した。

さらに、「この2日間の協議で、米中は貿易関係を巡り率直かつ建設的な対話を持った」とし、協議は継続すると語った。その上で「今後の協議の進展次第で、対中関税は撤廃か維持されることになるだろう!」と述べた。中国の習近平国家主席と自身との関係は引き続き堅固とも強調した。

中国国営メディアによると、劉鶴副首相は北京でさらなる協議を行うことで双方が合意したと表明。通商協議が決裂したわけではなく、交渉において小さなつまずきはつきものだとした上で、今後の交渉には慎重ながら楽観的だという見方を示した。同時に両国には相互理解があるが「基本問題」を巡っては依然相違があり、中国としては基本問題で譲歩することはできないとも明言した。

複数の関係筋によると、今週の協議では劉鶴氏が政策の変更は国務院(内閣に相当)が発令する法令で対応できるとして米国側に理解を求めた。これに対しライトハイザーUSTR代表は、中国が当初の約束通り法律を変更すべきだとして中国側の要求をはねつけたという。

CNBCによると、ムニューシン長官は現時点で今後の対中通商協議の予定は何ら決定していないと述べた。

パーデュー米農務長官は同日、中国との貿易摩擦による米農業への深刻な影響に対処するため、農家支援策を策定するようトランプ米大統領から指示を受けたと明らかにした。

この日の関税引き上げに加え、トランプ大統領は新たに3250億ドル相当の中国製品に追加関税を発動する手続きを始めたことを明らかにしている。

投資家の間では、貿易摩擦の激化がすでに減速傾向にある世界経済をさらに脆弱化させるとの懸念が広がっている。

フランスのルメール経済・財務相は、米中貿易戦争の激化が「世界経済にとって最大の脅威」との認識を示している。

*内容を追加しました。

ロイター
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