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米政府、対中関税を25%に引き上げ 中国は報復表明
[ワシントン/北京 10日 ロイター] - 米政府は10日、中国からの2000億ドル(約22兆円)相当の輸入品に対する関税を10%から25%に引き上げた。
これに対し中国商務省は、米国の関税引き上げは「非常に遺憾だ」とする声明を発表し、対抗措置を講じる考えを示した。対抗措置の詳細は明らかにしなかった。
中国の劉鶴副首相はこの日、ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表、ムニューシン財務長官と約90分会談。10日に協議を継続する見通しだ。
中国商務省は、協議は継続しているとし、米中が互いに歩み寄り、協力と対話を通じて問題を解決することを期待すると表明した。
新たな関税は米東部時間10日午前0時1分(日本時間同午後1時1分)以降の輸出品に適用される。対象となるのは5700品目以上。
米税関・国境取締局(CBP)によると、米東部時間10日午前0時01分までに中国を出発した貨物は10%の関税を適用する。
こうした猶予期間は、昨年の過去3回の関税引き上げには適用されていなかった。ただ、これまでの制裁関税は少なくとも3週間前に実施が通知されていた。今回は表明から約5日間での発動となった。
ゴールドマン・サックスはリポートで「非公式の猶予ができた。期間は数週間に及ぶ可能性もあり、その間に『ソフト』な合意期限に向けて協議を継続することができる」と指摘。「『ハード』な期限で関税が引き上げられた場合と比べ、市場心理の悪化は若干和らげられる可能性がある」とし、課題は残っているものの、両国は今後数週間に合意する機会が残されているとの見方を示した。
関税引き上げを受け、貿易摩擦の長期化が世界経済の成長を阻害するとの懸念から、米株価指数先物は下落。アジア株は上げ幅を削った。
米S&P総合500種Eミニ先物
格付け会社ムーディーズ・インベスター・サービスのアジア太平洋地域マネジング・ディレクター兼チーフ・クレジット・オフィサー、マイケル・テイラー氏は米国の措置について、世界貿易の不透明感を拡大し、米中間の緊張を高めたほか、世界のセンチメントに悪影響を及ぼしたと指摘。「関税引き上げは世界的な資産価格の見直しや融資状況の引き締まり、成長鈍化につながる可能性もある」とした。
関税引き上げの対象分野で最も規模が大きいのは、インターネットモデム、ルーターなどのデータ伝送機器で約200億ドル。次にプリント基板(PCB)の約120億ドルが続く。
家具、照明、自動車部品、掃除機、建築資材なども対象になる。
全米民生技術協会(CTA)のゲーリー・シャピロ最高経営責任者(CEO)は、関税を支払うのは、トランプ大統領が主張する中国ではなく米国の消費者と企業だと指摘。
「われわれの業界は米国で1800万人以上の雇用を支えているが、関税引き上げは壊滅的だ」とし、「米国のテクノロジー部門では、昨年10月以降、すでに発動されている関税で毎月約10億ドルのコストが発生している。これは追加のコストを吸収できない小規模事業者、スタートアップ企業には死活問題になり得る」と述べた。
エコノミストや業界コンサルタントによると、米国の消費者が関税引き上げの影響を感じるには3─4カ月かかる可能性がある。小売り業者は輸入コストの増加を受けて、値上げを迫られるとみられている。
*内容を追加しました。