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イラン産原油輸入の制裁免除終了、米政府が22日発表へ=関係筋

2019年04月22日(月)17時29分

[ワシントン/シンガポール 21日 ロイター] - 米国は22日、イラン産原油を輸入している全ての国に対し、近く輸入を停止するよう求め、停止しない場合は米国の制裁の対象となることを発表する方針だ。事情に詳しい関係筋がロイターに対し明らかにした。

米国は昨年11月、トランプ大統領がイラン核合意から離脱したことを受けてイランの原油輸出に対する制裁を復活させた。ただ、日本、中国、韓国、インド、台湾、トルコ、イタリア、ギリシャの8カ国・地域については6カ月間、制裁の適用除外を認めた。

トランプ大統領はここ数週間、制裁免除を終了させる意向を自身の安全保障チームに明確に表明。ボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)はこの問題を巡って政権側と調整を進めているもようだ。

イラン産原油の制裁免除終了については、米紙ワシントン・ポスト(WP)が先に報じており、関係筋はWPの報道内容を確認した。

WPのコラムニスト、ジョシュ・ロギン氏が米国務省当局者2人の情報として伝えたところによると、ポンペオ国務長官は22日に、「5月2日付で、国務省は現在イランから原油やコンデンセートを輸入している国に制裁免除を認めない」と発表する見通しという。

イラン産原油の制裁免除終了の報が伝わると、供給タイト化の思惑から原油価格は約3%上昇。22日アジア時間序盤の取引で北海ブレント先物は一時3.2%高の1バレル=74.30ドルと、昨年11月1日以来の高値を付けた。米WTI原油先物は一時2.9%上昇、1バレル=65.87ドルと10月30日以来の高値を記録した。

エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)のエネルギーアナリスト、ピーター・キールナン氏は「ベネズエラやリビアなど他の石油輸出国が現在、政治的な不透明感に見舞われていることを踏まえると、(イラン産原油の)量が大幅に失われれば、供給サイドに圧力がかかる」と指摘。「トランプ政権はサウジアラビアを頼ろうとするだろう。市場の供給タイト化懸念を和らげるため、サウジに政策を転換して生産量を増やしてもらおうとするのではないか」と述べた。

三菱商事のオイルリスクマネジャー、トニー・ヌナン氏は「サウジは(日量)200万バレル超の余剰生産能力を抱えている。米国が強硬姿勢をとることができる時があるとすれば、それは今だろう」と指摘した。

<アジア勢への影響大>

制裁免除が終了すれば、最も大きな影響を受けるのはアジアの買い手だ。イラン産原油の最大の顧客は中国とインド。韓国はイラン産コンデンセートの主な買い手になっている。

OANDA(シンガポール)のシニア市場アナリスト、ジェフリー・ハレー氏は、制裁免除の終了で「(アジアの)大口輸入国は別の調達先探しを迫られるが、世界の原油需給は既に構造的に極めてタイトな状態にある」と指摘した。

石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の主席エコノミスト、野神隆之氏は制裁免除終了について、トランプ政権にとって良い政策ではないとした上で、米国の制裁と石油輸出国機構(OPEC)主導の供給削減を背景に原油価格は一段と上昇するとの見方を示した。

インド外務省筋は「この件については米政権と連絡を取っている。米国側がコメントすれば、われわれもコメントする」と述べた。

中国政府のコメントはとれていない。

*内容を追加しました。

ロイター
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