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中国GDP、08―16年に1.7%ポイント過大評価=ブルッキングス研究所
[東京 5日 ロイター] - 米ブルッキングス研究所が3月に公表した「中国GDP統計の司法解剖」(A Forensic Examination of China’s National Accounts)と題する研究報告は、中国の国内総生産(GDP)成長率が、2008―2016年に年平均1.7%ポイントかさ上げされていたと指摘した。
中国のGDPは地方政府が提出する各地域のGDPの合計で決まる。
米シカゴ大学と香港中文大学の学者4人による同報告は、「地方政府の官僚は成長目標や投資目標の達成によって(中央政府から)評価を受ける構造があるため、データを歪める動機を有する」と分析する。
こうした歪みを修正するため、中国国家統計局(National Bureau of Statistics)は、独自の調査や統計を駆使して、地方政府から提出されたデータを調整する役割を担っている。
このため、中国GDPの最終的な正確さは、地方政府がデータを歪める度合い、歪みを調整するために国家統計局が使用するデータの頑健性、同統計局が調整にどれほど真摯に取り組むかという要素に拠っている。
同報告によれば、中国の地方のGDPは、生産面では、大企業製造業、大企業サービス業、そして「認定された」建設業者に対する調査から推定され、補完的に中小企業の調査結果も取り込まれる。
支出面は、地方政府が消費、投資、財政支出、純輸出を計測するが、支出面の合計は、生産面のGDPを上回るのが常であり、その差は純輸出として計上される。
純輸出は支出面と生産面の残差を埋めるための架空の数字であり、いかなる貿易統計にも依拠していないと同報告は指摘する。
また、地方のGDPの合計は、中国全体のGDPの規模を頻繁に上回ってきたが、両者のGDPを比較分析すると、消費については地方と国家の差はほとんどない。
しかし、投資と純輸出では両者のデータに大きな隔たりがあり、特に製造業で乖離が顕著だという。
同報告の著者らが、産業、建設、卸売、小売セクターの生産量について、公表されたデータや地方政府によって歪められる可能性が小さいデータを使用して、中国全体のGDPを推定したところ、2007/08年度までは、統計局の調整は妥当なものだった。
しかし、「地方政府によるGDPの過大申告が2008年以降、エスカレートしても、統計局は相応の下方修正を施していない」と研究報告は指摘する。これは地方の官僚が大きな権力を持つため、統計局の職員が彼らと全面対決することを回避する意図があるからだと報告書はみている。
結果として、中国全体の実質GDPは上振れしており、統計局が発表した実質GDPは、2008年―2016年のベースラインの推定値より平均で1.7%ポイント高くなった。
同時に、貯蓄率が2008から2016年までに約10%ポイント低下していることを指摘した。低下分の3分の2は対外黒字(純輸出の増加)として計上され、残りの3分の1は投資の変化として統計上は現れている。