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焦点:米国債、高利回り求める個人投資家の買い継続へ

2019年03月24日(日)09時22分

[ニューヨーク 21日 ロイター] - 米国債は個人投資家からの引き合いが強く、昨年は投資家の種類別で個人の割合が過去最高を記録した。Tビル(財務省短期証券)など期間の短い銘柄を筆頭に利回りが他の金融商品に比べて高い水準を保っているためで、今年も個人投資家が積極的に購入する展開が続きそうだ。

今年のTビル週例入札は個人投資家が記録的なペースで落札を続けている。期間1年以内の米国債の金利が10年ぶりの高水準となり、銀行預金や譲渡性預金証書(CD)をはるかに上回るリターンが見込めるからだ。

米連邦準備理事会(FRB)とモルガン・スタンレーのデータによると、米国債の昨年末の供給量は1兆3600億ドルと、2015年の約6880億ドルから2倍近くに増えた。一方、米証券業金融市場協会(SIFMA)のデータによると、昨年の個人投資家の購入額は約7000億ドルで、保有残高は2兆近くと過去最高に達した。

FRBは20日の連邦公開市場委員会(FOMC)で年内の利上げを見送る考えを示したが、米国債は利回りが他の金融商品を上回る状態が続くとみられる。30年近くにわたり米国債を大量購入してきた主要中銀など外国人投資家は2014年以降、米国債を売り越しているが、高利回りはこうした外国人投資家からの需要減退の影響を和らげるのに役立ちそうだ。

米政府は今後10年間にわたり大量の借り入れを行い、投資家は新発債の消化を迫られる。議会予算局(CBO)によると、米財政赤字は向こう10年間で12兆ドル増加し、過去50年間で平均2.9%の対国内総生産(GDP)比は年4.4%に達する見通しだ。これは年1兆ドルの赤字に相当する。

しかしBMOキャピタル・マーケッツの債券ストラテジー担当副社長のジョン・ヒル氏は「大規模な財政赤字が生じることについては事前に周知が行き渡っており、新発債は国内で消化可能だと考えている」と話す。米国債はマクロリスクをヘッジする極めて当然な手段であり、こうした機能は今後も変わらないという。

例えば債務管理局のデータで今年1─2月のTビルの入札結果をみると、個人投資家の落札額は約400億ドルで、前年同期の2.5倍近い。特に1カ月物Tビルは需要が旺盛で、1月末の入札では450億ドルの起債額のうち個人投資家が33億4000万ドルを落札、落札比率が過去最高を更新した。

当局による過去10年間の大規模金融緩和で金利が非常に低くなり、投資家は証券口座などに余剰なキャッシュを抱えていた。しかし昨年5月に米10年国債の利回りが節目の3%を超えると、国内の個人投資家はこぞって米国債に資金を注ぎ込んだ。

INTL・FCストーン・ファイナンシャルのグローバル・マクロ・ストラテジスト、ビンセント・デュラード氏は「米国の金利は10年間にわたりゼロ近辺が続き、実際のところキャッシュバランスに注意を払っていなかった」と振り返り、低いデュレーションリスクで3%近い利回りが手に入るなら2年物米国債に投資するのは当然だと述べた。

デュラード氏によると、個人投資家の金融資産に占めるキャッシュの比率は昨年9月に30.5%と2007年9月以来の低水準となり、長期的には米国債相場へのキャッシュ流入が細る可能性がある。これに対して株式への資産配分比率は52%と過去20年で最も高く、株式市場が反転し下落すれば、4兆ドルが米国債市場に流入する見通しだという。

モルガン・スタンレーの金利ストラテジー部門の責任者、マシュー・ホーンバック氏は、米国債は3カ月物Tビルから10年物までいずれも利回りが金融危機後の平均を上回っていると指摘。2年物米国債の利回りは足元で2.4%とS&P総合500種の配当利回り(1.9%)を上回っていて米国債に投資妙味があり、個人投資家は今年も米国債でナンバーワンの買い手になると予想した。

(Gertrude Chavez-Dreyfuss記者)

ロイター
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