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アングル:アジアの各国中銀、一斉に金融緩和へUターン
[香港 20日 ロイター] - これまで金融引き締めに目を向けていたアジア諸国の中央銀行が、世界経済の減速や米中貿易摩擦の影響で、緩和姿勢へと180度転換している。
昨年末には金融緩和の副作用が注目されていた日銀も、次の一手は利上げだと譲らなかったオーストラリア準備銀行(RBA、中央銀行)も、今では緩和に傾いている。
インド、インドネシア、フィリピンなど経常収支が赤字の新興諸国は、通貨安に対抗するため引き締めを続けざるを得ないとみられていたが、これらの国々でも利下げ観測が広がっている。
方向転換の重要な原因はドル相場と石油価格の下落だが、アジア経済のエンジンである中国の経済成長率が予想を下回り、周辺諸国にディスインフレを輸出している点も大きい。
また米連邦準備理事会(FRB)は先月、利上げについて慎重な姿勢に転じた。
「各国中央銀行が金融政策を再考しているのは明らかだ」とDBSグループ・ホールディングス(シンガポール)のピユシュ・グプタ最高経営責任者(CEO)は言う。
フィリピンを除く主要アジア諸国はすべて、インフレ率が中銀目標の下限か、それを下回る水準にある。マレーシア、シンガポール、韓国、台湾、タイのインフレ率は1%未満だ。
HSBCのアジア経済調査共同責任者、フレデリック・ニューマン氏は「基調的な物価圧力は著しく弱く、全般に下がっている。このため追加緩和の必要性が増している。もっとも金融緩和だけでは成長率を大きく押し上げるのに不十分だが」と話した。
日銀の黒田東彦総裁は19日、必要になれば追加緩和も検討していくと発言した。
フィリピン中央銀行のギニグンド副総裁は同日、景気モメンタムを維持するのに十分な流動性が金融システムにないと判断すれば速やかに行動すると述べた。同行は昨年、5回利上げしている。
RBAは今月、従来の引き締めバイアスから中立姿勢に転じたが、ロイター調査では利下げを予想するエコノミストが増えている。
インド中銀は今月予想外の利下げに踏み切り、アナリストは追加利下げを予想している。
エコノミストは今のところ、どのアジア諸国も利下げは1度限りで終わると予想している。しかしそれも中国経済の動向次第だ。
中国人民銀行(中銀)は1月、預金準備率を100ベーシスポイント(bp)引き下げており、アナリストは年内に150bpの追加引き下げがあると予想している。
一部のエコノミストは、人民銀行が政策金利も引き下げると予想している。ただ、利下げは人民元相場を押し下げ債務リスクを再燃させる恐れがあるため、最終手段になるというのが大半の見方だ。
(Marius Zaharia記者)