ニュース速報

ゴーン氏の無罪確信、本来は日産内部で処理すべき問題=弁護士

2019年02月21日(木)01時23分

[東京 20日 ロイター] - 会社法違反(特別背任)の罪などで起訴された日産自動車<7201.T>前会長のカルロス・ゴーン被告(64)の新たな弁護人となった弘中惇一郎弁護士(73)が20日、都内で着任後初めて会見した。ゴーン被告を巡る一連の事件について、全ての起訴事実で「無罪と確信している」としたうえで「日産内部で本来は、処理しなければいけない問題」と指摘。なぜ事件となったのか「大変、奇異な気持ちを持っている」と語った。

弘中氏は「日産が本来は内部で解決すべき問題を検察に持ち込んだ。本来ならば、検察も普通は民事不介入が原則だと思うが、それを取り上げたという感じが強い」と述べた。「会社内部でやるべき問題を検察が事件化し、外に致命的な不可逆的なダメージを与えることについては非常に危惧している」といい、「そういう視点を含め、この事件に取り組んでいきたい」と意欲を見せた。

ゴーン被告の弁護士を巡っては、昨年11月の逮捕後から担当していた元東京地検特捜部長の大鶴基成弁護士らが13日付で辞任したのを受け、弘中氏が新たに選任された。弘中氏は、厚生労働省の郵便不正事件で文書偽造などの罪に問われた村木厚子・元事務次官や、資金管理団体「陸山会」を巡る事件で強制起訴された小沢一郎・自由党代表の無罪判決を勝ち取った経験を持つ。

今回の事件にあたり、弘中氏は小沢氏の陸山会事件を引き合いに出し、あの事件は「明らかに小沢氏を政治的に追い落とす、追い詰めるという目的で、いってみれば、いいがかり的な1つの事件を作り上げた気がする」と振り返った。そのうえで、小沢氏は無罪となったが、政治的な力はかなり落ちた、などと説明。

ゴーン被告もたとえ、無罪を勝ち取れたとしても「彼がこの期間に失ったもの、日産やルノーにおける立場を含めて、なかなか取り返すのは難しい」と話した。

ゴーン被告が羽田空港に降り立った直後に突然逮捕され、長期の拘留に及んでいることを踏まえ、弘中氏は「日本はうっかり行くと、とんでもないことになる。何をされるかわからない国」として「衝撃的な印象を世界に与えた」と指摘。「今後の日本のビジネスの展開にとって、非常に大きな問題になるのでは」と話した。

長期に身柄を拘束し自白を得ようとする捜査手法、いわゆる「人質司法」と呼ばれる日本の刑事司法制度を「国際的な水準に見直していく機会ではないか」とも述べた。

ゴーン被告の弁護団には、同じく村木氏の弁護を担当した河津博史弁護士、1995年に地下鉄サリン事件を起こしたオウム真理教メンバーの弁護人を務めた高野隆氏らが参加している。

共同通信によると、東京地裁は20日、ゴーン被告と前代表取締役のグレッグ・ケリー被告、法人としての日産について、争点を整理する「公判前整理手続き」の実施を決定した。

ゴーン被告は会社法違反(特別背任)と金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の罪、ケリー被告と日産は金融商品取引法違反(同)の罪で起訴されている。

*内容を追加しました。

(白木真紀 編集:田巻一彦)

ロイター
Copyright (C) 2019 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

バイデン氏、建設労組の支持獲得 再選へ追い風

ビジネス

米耐久財コア受注、3月は0.2%増 第1四半期の設

ワールド

ロシア経済、悲観シナリオでは失速・ルーブル急落も=

ビジネス

ボーイング、7四半期ぶり減収 737事故の影響重し
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 2

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 3

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」の理由...関係者も見落とした「冷徹な市場のルール」

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 6

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 7

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    コロナ禍と東京五輪を挟んだ6年ぶりの訪問で、「新し…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 10

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中