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焦点:米株投資家が警戒する「プロフィット・リセッション」
[ニューヨーク 8日 ロイター] - 米国株の投資家は、今年の企業利益が悪化するのではないかとの懸念を強めている。アップル
アップルが先週、過去15年余りで初めて売上高見通しを引き下げたが、それよりずっと前から今年の企業利益予想は下振れしてきた。
もとより今年の企業利益に、減税効果を享受できた2018年ほどの急速な伸びは期待できない。リフィニティブのIBESによると、今年のS&P総合500種企業の予想増益率は足元で6.8%。昨年10月1日時点は10.2%だった。
さらに悪いことに、今年前半の企業利益はもっと振るわなくなるだろう。S&P総合500種企業の利益の約2割を占めるハイテク部門の利益が急角度で落ち込むと見込まれるためだ。
そこで一部の投資家は、企業利益の前年比が2四半期続けてマイナスとなる「プロフィット・リセッション」の局面に株式市場が突入する気配がないか見極めようとしている。
直近でプロフィット・リセッションが起きたのは15年7月から16年6月まで。同期間の株価はおおむね低迷した。
ヒュー・ジョンソン・アドバイザーズのヒュー・ジョンソン最高投資責任者は「まさにプロフィット・リセッションが視野に入ってきた。アップルのコメントとそれらの行き着く先は、予想利益を一段と押し下げる原因になる」と述べた。
<ハイテク株の憂うつ>
プロフィット・リセッションに対する警戒感が浮上してきたのは、折悪しく株価が不安定化している時期だ。
S&P総合500種は昨年12月の値動きが先の景気後退期以降で最悪となり、20カ月来の安値を付けたクリスマスイブから足元までの上昇率は9%強にとどまっている。
1年前は18倍だったS&P総合500種企業の予想利益に基づく株価収益率(PER)は14倍まで低下する中で、相場強気派の主なよりどころは、最近の値下がりで株価が過小評価されるようになったという主張しかない。
アップルの警告は、米中貿易摩擦の影響の大きさも浮き彫りにしている。
ホライズン・インベストメント・サービシズのチャック・カールソン最高経営責任者(CEO)は、アップルの業績見通し引き下げがプロフィット・リセッション到来を見込む人々に確認材料を与えたと指摘。そのインパクトはサプライヤーだけでなく、多くの投資家の心理を直撃したと説明した。
ハイテク部門の利益見通しは、原油安の打撃を受けたエネルギー部門以外のどのセクターよりも下振れしている。
S&P情報技術株指数を構成する銘柄の今年1─3月期の予想利益は、リフィニティブのデータに基づくと前年比で減少し、通年でも2.6%増と全セクターで最も低い。ハイテク部門は、長年にわたって増益の流れを主導してきただけに、情勢が一変したことを物語る。
<景気後退の足音>
リフィニティブのデータでさかのぼれる1968年以降、S&P総合500種銘柄がプロフィット・リセッションに見舞われたのは計10回あった。最長期間は07年第3・四半期から09年第3・四半期までで、世界金融危機および大恐慌以来の深刻な景気後退の時期と重なる。
直近のプロフィット・リセッションこそ、景気後退を伴わずに済んだとはいえ、これは例外だった。過去10回のプロフィット・リセッションのうち7回は、景気後退を招いている。
ストラテジストの話では、今年の多くの米多国籍企業にとってより大きな悪影響を及ぼしかねないのはドル高だ。
主要6通貨に対するドル指数は昨年第4・四半期中に1%上がり、第4・四半期末の前年比は4.4%高だった。
フィデューシャリー・トラスト・カンパニーのハンス・オルセン最高投資責任者は「市場関係者は(ドル高を)話題にし始めている」と述べ、18年の裏返しで原油価格下落も企業の足を引っ張ると心配している。
一部大手投資銀行の有力ストラテジストは、最近になって企業利益により悲観的になってきた。
モルガン・スタンレーは昨年末に公表した見通しで、今年緩やかなプロフィット・リセッションに入る確率は50%強あると予想。ゴールドマン・サックスは、今年は全地域、とりわけ米国で利益の伸びが急激に鈍り、コンセンサス予想が相当下振れするとの見方を示した。
(Caroline Valetkevitch記者)