May Angel Alexander Marrow Marcelo Teixeira
[ロンドン/ニューヨーク 20日 ロイター] - チョコレート製品はこの1年、バーが小さくなり、ウエハース部分が増量され、代替品が出回っている。しかしカカオ豆先物価格が2024年後半の高値から70%近くも下がって採算性が向上したことから、大手チョコレートメーカー1社が本物のカカオ豆を使った製品に回帰しており、他社も続く可能性がある。
消費者にとっては店頭価格の低下、カカオ農家にとっては需要の回復が期待される。
米国の菓子大手ハーシーは、同社がチョコレートキャンディーと呼ぶチョコレート代替品のカカオ含有量を引き上げる計画を公表。来年から全てのハーシーズおよびリーセスの製品を元の原材料配合に戻すとした。リーセス創業者の孫は、同社がリーセス主力製品の一部をチョコレートキャンディーに変更したことを批判していた。
独立コンサルタントのロジャー・ブラッドショー氏などの専門家や業界関係者は、他社も追随する可能性が高いと語る。同氏は「現在のカカオ価格の水準を踏まえれば、本物のチョコレートに戻すことは極めて理にかなっている」と語った。
米国の菓子大手モンデリーズは、チョコレート製品の原材料に関するコメント要請に応じず、スイスの同業大手ネスレからも直ちにコメントが得られなかった。イタリアのチョコレート菓子大手フェレロは、原材料の配合は短期的な原材料価格の変動に左右されないとしたが、カカオ使用量の変更についてはコメントを控えた。
<カカオ豆価格が急落>
24年には悪天候や病害の影響でカカオ豆価格が3倍近くまで高騰し、1トン当たり1万2000ドル(約190万6800円)を突破。チョコレートメーカーはバーのサイズ縮小、ウエハースや果物、ナッツの配合増加、チョコレート代替品の投入に動いた。
メーカーはカカオ豆の在庫取り崩しや製品の値上げも行い、ヒマワリの種とオーツ麦から作られるカカオ不使用のチョコレート代替品「チョビバ」などへの投資を拡大した。チョビバはドイツの新興企業プラネットAフーズが開発した製品で、世界最大のチョコレートメーカー兼カカオ加工業者のバリーカレボーとの提携を通じて販売されている。
専門家によると、こうしたメーカーの対応によりカカオ豆需要は急激に落ち込み、24年後半のピークから価格が70%下落する要因になった。
カカオ市場分析の第一人者、スティーブ・ウォーターリッジ氏は、今年9月末までの1年間の需要は9年ぶりの低水準に落ち込む可能性があると指摘。ただ価格下落により、今年下半期からは需要が回復に向かうとの見方を示した。同氏は「価格をここまで押し下げた要因はいずれも解消に向かう可能性が高い」と述べた。
<チョコレートの値下げ、カカオ需要の拡大>
チョコレートメーカーは数カ月前に購入価格をヘッジあるいは固定したり、大量の在庫を抱えたりしているため、カカオ豆価格の変動がチョコレートの小売価格に反映されるまでには10カ月ほど要する可能性がある。
このため、スーパーマーケットなどの買い手は25年半ばごろから、チョコレートメーカーに値下げを迫ってきた。一部メーカーはこれに応じている。
モンデリーズは先月、欧州で一部のチョコレート製品を値下げし、販売数量が伸び始めていると発表した。
世界のチョコレートの4分の1に原材料を供給するバリーカレボーは、ロイターが上半期決算を基に試算したところ、今年8月までの6カ月間の販売数量について、前年同期比1―5パーセントの増加を見込んでいる。
同社は、現在のカカオ価格であれば、カカオバターの代わりに植物性油脂を使用する代替チョコレートよりも、本物のチョコレートを製造する方が安く済む場合があると指摘する。
同社のハイン・シューマッハ最高経営責任者(CEO)は4月に「一部の顧客企業がチョコレートに戻りつつある」と語った。
一部の地域では法的な動きもカカオへの回帰を後押ししている。
1人当たりのチョコレート消費量が世界6位のブラジルでは今月初め、ダークチョコレートと表示されるすべての製品について、カカオ固形分の含有量を少なくとも35パーセントとするよう義務付ける法律が成立した。欧州や北米の水準に近づく規則変更だ。
<価格回復は緩やか>
伝統的なチョコレートへの回帰は、主要生産国であるコートジボワールとガーナのカカオ農家にとって朗報だ。合計約200万人に上る両国のカカオ農家は貧困にあえいでいる。
ただ、カカオ豆の販売数量が価格高騰前の水準に戻るには時間がかかりそうだ。ベテランのカカオコンサルタントは、需要が「23年、24年の水準に戻るには2年半はかかるだろう」と予想した。
同氏はその理由について、Z世代がカカオ不使用のチョコレートなどのイノベーションを受け入れやすいことや、肥満症治療薬が人々の食習慣に与える影響など、小さな潮流が積み重なるためだと説明している。
またチョコレートメーカーはカカオ価格が再び高騰することを恐れ、一部の代替製品を今後も残す可能性が高い。専門家は、代替製品は一般向けの市場において依然として収益性が高いと指摘した。