Mariam Sunny

[21日 ロイター] - トランプ米政権によるトランスジェンダーの若者向けのジェンダー肯定ケア(性別適合医療を含む性自認尊重のための幅広い支援)の制限を受け、そうした若者を抱える米国の家族は、州外への移住を検討している。医師や患者、政策専門家、擁護団体などが明らかにした。

トランプ米大統領は2期目の就任直後、19歳未満の患者のジェンダー肯定ケアへのアクセス制限を目的とした大統領令を発令。これは、主に共和党主導の27州で導入されている同医療を制限する法律や規則に追随する動きだ。

大統領令は裁判官によって一時的に差し止められているが、政権は新たな禁止措置の推進を続ける。

昨年7月に司法省がジェンダー肯定ケアに関連する患者記録について医療提供者に召喚状を送り始めた頃、アラバマ州出身の19歳のトランスジェンダー女性、ハーレイ・ウォーカーさんは移住を考えていた。その措置は裁判所によって一時的に差し止められている。

ウォーカーさんは「高校卒業後、どこの大学に行くべきか家族と話し合っていた。私はアラバマ州オーバーン出身で、州内でも有数の大学のすぐ隣に住んでいる。しかし両親も医師も、そして私自身も犯罪者扱いされる状況では、アラバマ州にとどまることはできなかった」と明かす。

現在はジェンダー肯定ケアへのアクセスが保護されているメリーランド州の大学に通うウォーカーさんは「ここには安全だという感覚がある。とても受容的で、かなり進歩的な州だ」と語った。

父親のジェフ・ウォーカーさんによると、家族で今も毎日、理解のある州や国外への移住について話し合っているという。

性的少数者LGBTQの若者に専門的な支援を無料で提供する非営利団体、トレバー・プロジェクトが2025年3月4日から10月15日にかけて実施した調査の最新データで、ハーレイさんのような事例は珍しくないことが分かった。13歳から24歳のLGBTQの回答者1万6000人のうち、3分の1近くが、ケアを受けるために本人または家族が別の州への移住を検討していると回答した。

カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の健康記録に基づく研究によれば、米国では13歳から24歳の約150万人がトランスジェンダーだと自認している。

<政策と科学>

トランプ政権がジェンダー肯定ケアを終わらせようとする取り組みには、病院に対し、収益性の高いメディケア(高齢​者向け公的医療保険)へのアクセスを打ち切ると脅す措置も含まれている。メディケアは65歳以上または障害を持つ人を対象とする制度で、7000万人が利用している。

ジェンダー移行のケアは、希望する名前や代名詞の採用に関するアドバイスから、思春期抑制薬(二次性徴抑制剤)やホルモン剤、あるいは手術まで多岐にわたる。医療ケアは、出生時の性と性自認が一致しないことによる苦痛である「性別不合(ジェンダー・ディスフォリア)」と診断された人々に提供されることが多い。

米国医師会、内分泌学会、米国小児科学会を含むほとんどの医療団体は、こうしたケアが命を救うものになり得ると述べている。

一方で今年2月に米国形成外科学会は、若者のジェンダー関連の手術については延期することを推奨した。

LGBTQの健康擁護団体GLMAのエグゼクティブディレクター、アレックス・シェルドン氏は、病院がこれらのサービスを縮小または一時停止する決定は、臨床的な証拠や患者のニーズの変化によるものではなく、法的および財務的なリスク評価に基づくものだと指摘した。

前出のトレバー・プロジェクトの調査では、若者の約75パーセントがジェンダー肯定ケアへのアクセスにおいて困難な状況を経験していることがわかった。

<減っていく選択肢>

今年2月のある報道では、昨年1月以降に40余りの病院が若者向けのこうしたケアを制限している。

ミシガン大学付属の医療施設は、昨年7月の連邦政府による召喚状と「臨床医や当機関に対する前例のない法的・規制的脅威」を理由に、昨年8月に18歳未満へのジェンダーケア治療としてのホルモン療法と思春期抑制薬の提供を停止した。

クレア・カブレラさん(43)は、ケアを受けるために州内の地方部からこの施設まで通っていた10代の子を持つ母親だ。その子のケアは、6年間にわたり、小学4年生での代名詞と服装の変更から始まり、思春期抑制薬、テストステロン投与へと段階的に移行してきた。

3カ月分のテストステロンを使い果たした後、カブレラさん一家は現在、注射を欠かさないために遠隔診療サービスに頼っている。注射の中断はホルモンの変化、月経痛、不安につながる可能性がある。

カブレラさんは「州外や国外の選択肢を探すことも含め、子供をサポートするためなら何でもするつもりだ」と述べた。

<代替策を求め奔走>

民主主義とLGBTQの権利を擁護する非営利のシンクタンク、ムーブメント・アドバンスメント・プロジェクトの医療政策アドバイザー、ケラン・ベイカー氏は、米国内でのケアへのアクセスが減少するにつれ、カナダや欧州諸国がより魅力的な選択肢になっていると語る。

カリフォルニア州ロサンゼルスでは、昨年、有力な小児専門病院のチルドレンズ・ホスピタル・ロサンゼルスが、外部からの圧力と「実行可能な道がない」ことを理由に、30年続いたジェンダー医療の専門クリニックを閉鎖した。

ロサンゼルスLGBTセンターのオーガナイザー、マリア・ドゥー氏は、閉鎖以来、家族は代替手段を求めて奔走しており、薬を買いだめしたり、海外での治療を模索したりしているという。

ロードアイランド州の産婦人科医、ベス・クローニン氏は、治療のための安定した環境を提供してくれる「青い州(民主党支持者が多い州)」を求めて、共和党系のテキサス州やフロリダ州から患者が来ていると述べた。

ロードアイランド州の病院がトランスジェンダーの若者の医療記録の提出に応じる義務があるかどうかを巡っては、司法判断も対立しており、現在、上級審で争われている。

クローニン氏によると、ある患者は、親族がいるカナダに移住することを検討していたが、別の若い父親は、移住は費用がかかりすぎると話したという。同氏は「一般的に、移住はほとんどの患者にとって現実的な選択肢ではない」と語った。

Reuters Copyright (C) 2026 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。