中国はトランプ再選を願っている

2020年10月24日(土)22時08分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

アメリカの対中感情の悪化は不変なので、バイデンが当選すれば国際社会の信用を得て対中包囲網は強化されるが、トランプ再選ならアメリカ国内の分裂が進み国際社会におけるアメリカの信用失墜が加速するので中国に有利だと中国は思っている。

トランプ再選が中国に有利という中国人の心情

他国の大統領選挙に関して中国政府や中国共産党組織がものを言える立場にはないが、少なくとも中国大陸のネット空間における「世論」から見ると、「トランプ再選の方が中国には有利に働く」という意見が圧倒的に多い。つまり圧倒的多数が「トランプ再選」を願っているということだ。

その主たる観点を以下に列挙する。

1.トランプは中国人の、アメリカに対する幻想を潰してくれた

改革開放以来、中国人のアメリカに対する憧れは尋常ではなかった。私は1990年代に「欧米に留学して中国に帰国した中国人元留学生」と「日本に留学して中国に帰国した中国人元留学生」の「留学効果に関する日・欧米比較」という調査を行ったことがある(日本の科研費の研究代表として)。

そのときにアメリカで取得した博士学位が最も高く評価されたが、それは中国社会がアメリカという国家を高く評価していたからである。

しかしトランプ大統領の出現によって、中国人民、特に若者のアメリカに対する憧れと幻想を潰してしまった。

2.トランプの出現は「民主主義への幻滅」を中国人に巻き起こした

一党支配体制の中で経済的繁栄を続けてきた中国だが、それでもなお一部の者は「民主主義」というものへの憧れを心ひそかに抱いていた。しかしトランプの出現によって、「民主は少しも良いものではない」という幻滅を、ほとんど全ての大陸にいる中国人に抱かせた。それは人種差別や暴力、国際社会からの離脱などによる身勝手さから「民主主義大国」の実態を知るに及んだからだが、さらに大統領選挙戦における相手候補への節操がないほどの罵倒、罵詈雑言によって「民主主義は少しも良くない」という印象を中国人民全体に巻き起こしている。

3.トランプは先進国のアメリカに対する信用を失墜させた

アメリカのギャラップが今年の7月27日にU.S. Leadership Remains Unpopular Worldwide(アメリカのリーダーシップは世界的に不人気のまま)という調査結果を発表している。全世界の、アメリカのリーダーシップに関する調査と世界をいくつかのブロックに分けた調査を行っているが、何よりも大きな影響力を持つのはヨーロッパ諸国のアメリカのリーダーシップに対する信頼度であろう。

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