ゴーンの切手まであるレバノンからどうやって被告を取り戻す?

2020年1月9日(木)19時42分
広岡裕児(在仏ジャーナリスト)

今回、レバノンに逃亡した時、大統領に面会したというのは誤報だったらしいが、ゴーン被告の弁護士は謁見した。

ゴーン被告はベイルートにたくさんのペーパーカンパニーをつくってさまざまな疑惑を持たれているが、レバノンでは国際的な租税回避や怪しい金の動きは悪いことだとは思われていない。かつて、レバノンは金融センターとして中東のスイスといわれていた。現在金融センターはドバイやイスラエルに移動したが、金融センターに不可欠の銀行による秘密保持については、本家のスイスとは違って今もまったく変わっていない。

逃亡劇にフランスが関わっているという噂が日本で流れているようだが、個人的にゴーン被告のシンパが関わったり、仕事として関わったりした者がいたとしても組織的に関与することは絶対にない。もし、そんなことをしたらマクロン政権は吹っ飛ぶ。

フランスでは不評

カスタネ―ル仏内相も、ゴーン被告の逃亡についてすぐ「誰も法の適用を自分で免除することはできない」と談話を出した。

「ルフィガロ」紙のアンケートでゴーン被告の逃亡が「正しかった」と77%が答えていたが、もともとさほど精度の高い調査ではなく、ネットでの即席調査だ。ルフィガロは中産階級から富裕層の読者層が多いからバイアスがかかるし、何よりも、多いのは日本の司法の在り方に対する批判票である。ゴーン被告を支持しているわけではない。プロ経営者の法外な高給に対する批判は日本よりも厳しい。

署名運動をするインターネットサイトで逮捕直後から1年以上続いている「カルロス・ゴーンを支持しよう」という呼びかけへの署名は1月9日9時現在729しかない。しかもそのうち40は8日のゴーン被告の記者会見開始後である。ゴーンを日産を救った救世主、ヒーローとうたい、「数百万ドルを横領したって?それが何だというんだ:(日産の)利益という大洋の中のたった一滴にすぎないでないか!!!」という「カルロス・ゴーンを救おう、ルノーを救おう!」という署名運動の署名はたった58だ(ちなみに、別のサイトでドバイの人が呼びかけた英語の「Freedom for Carlos Ghosn」は、26850 人)。

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