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オーストラリアの診察室から

高尾康端|オーストラリア

オーストラリア医療従事者

画像: pepifoto-iStock

オーストラリアでは今も医療従事者が不足しています。他の多くの国でも似たような状況のようです。背景としてコロナで医療現場を離れた人が多くいたことやコロナの蔓延時、海外労働者の受け入れを停止したなどの理由があります。

オーストラリアではここ10年以上の間にいくつもの新しい医学部が誕生し、医学生の数も大幅に増えていました。オーストラリア政府は数年前、オーストラリアには十分な医師がいるが、問題は都市部に集中していることだといっていました。そして海外からの医師の移住制度も厳しくなるだろうと予測されていました。しかし現在はまた医師や看護師が足りてない状態です。看護師の海外からの受け入れ規制も緩和されています。

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画像:Serhej Calka-iStock

オーストラリアには海外で医師免許を取得している場合、状況次第で試験などを受けずに専門医資格をそのまま移行できる制度があります。やはり英語が母国語の国が有利で、イギリス、カナダ、アメリカなどで専門医資格を持っているとオーストラリアで、試験を受けずに働ける場合が多いようです。無試験で移行できるか否かはその時の医療業界の状況、専門の科の種類などによります。

地方ではいまだに医師不足は深刻なため、海外から来た場合は何年間か地方の限られた場所でしか働けない場合もあります。この制度は他の職業でもあり、人材が不足している職業で、地方で一定期間で働くと永住権がおりることもしばしばあります。しかし職種やどの地域かは必要に応じですぐ変わります。オーストラリアの自国に必要な労働者を確保する制度は迅速で、よくできていると思います。

海外から医師や看護師を確保することで、オーストラリアは国のお金を使わずに済むという利点もあります。アメリカの研修医制度もそうですが、海外からオーストラリアで働きたい医師などを集めることで、自国で教育にかかる費用を抑えることができます。

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画像:Fly View Productions-iStock

イギリスの国民保健サービス制度であるNational Health Service (NHS)には労働環境や収入の問題もあり多くのイギリス人医師がオーストラリアに移住してきています。オーストラリアの医師リクルート会社が外国人医師の採用にかなり力をいれています。

海外から医師などを確保するのはオーストラリアにとっては良いのですが、一方で多くの医師が移住してしまった国では医療従事者の不足が拡大するという問題が生じます。今後各国の医療従事者の確保がどうなっていくのか注目です。




参考
Doing the numbers on doctor shortages • Inside Story
https://www.thetimes.co.uk/article/9786f05c-d787-11ed-80bc-e358583c5d62?shareToken=1ec6e3b3589b1f199888887967434289

 

Profile

著者プロフィール
高尾康端

日本、スイス、シンガポール、アメリカで育ち、2004年からオーストラリアに移住。シドニー大学医学部を卒業。現在は東ブリスベンエリアHawthorne Clinicにて家庭医 (GP)として勤務。家庭医の観点からみる病気についての情報、また母国である日本と移住地オーストラリアの医療システムの違いや、オーストラリアで病気になった時に役立つ情報を発信している。

Twitter:@dryasutakao
Facebook:Dr Yasu Takao
ブログ:https://www.dryasutakao.com.au/blog

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