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オーストラリアの診察室から

高尾康端|オーストラリア

オーストラリアのコロナ事情とコロナ後遺症

画像:wildpixel-iStock

最近は一週間に一度しか発表されなくなりましたが、オーストラリアのコロナの新規感染件数はまた徐々に増えてきています。クイーンズランド州はコロナの件数によって規制を変えるトラフィックライト(信号)システムを数か月前から使用しています。現在はAmber(黄色)で、医療施設、室内でソーシャルディスタンスできない場合や公共交通機関ではマスクをするように、となっています。病院などではこれは守られているようですが、室内のイベントなどでマスクをしている人はほとんどいません。

コロナの発生件数、入院患者数、ICUに入院の患者数も11月から増加してきています。公衆衛生の専門家は以前から人の移動が増える年末あたりからコロナの件数はまた上昇し始めるだろうと指摘していました。オーストラリアでは年末をひかえて、学校行事やクリスマスイベントが増えてきています。オーストラリアではこの時期にスクーリーズと呼ばれる行事が開催されます。これは1週間近くに及ぶ高校卒業記念パーティー等のイベントで一週間近く続きます。これらの人が多く集まるイベントが感染拡大要因の一つと考えられています。

発生件数が増えているとはいえ、そのペースは落ち着いているため、抗ウイルス薬の入手や病院の遠隔モニタークリニックの空きなどは今のところは不足しているとの声はきかれません。今後コロナの件数が増えることはほぼ確実ですが、昨年のような予想をはるかに超えるような事態にならないことを祈ります。

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画像:Wachiwit-iStock

コロナの急性症状の増加の他にもコロナによる問題は拡大しています。そのうちの一つが日本でも話題になっているコロナ後遺症の問題です。今後何十年も続く大きな問題になるだろうと懸念する医療関係者もいます。しかし今のところ専門的な治療施設などはあまり増えていませんし、効果的な治療法も開発されていないようです。コロナ後遺症にはいろいろな症状があるのも問題の一つです。コロナ後遺症とされる症状は疲労感・倦怠感、関節痛、筋肉痛、咳、息切れ、胸痛、集中力低下、頭痛、抑うつ、嗅覚障害、味覚障害、動悸、睡眠障害、筋力低下などいろいろあります。コロナ後遺症だろうと疑われても、まだその症状の発症の仕組みが理解されていないものも多くあります。コロナ後遺症の治療にはいろいろ診療科、医療関係者の協力が必用ですが、そういった治療を提供できるところはまだ少ないようです。ブリスベンでもコロナ後遺症のクリニックが徐々にはじまりましたが、まだ数は少ないようです。

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画像:bsd555-iStock

コロナに伴ういろいろな問題が完全に解消するにはまだ時間がかかりそうです。




参考
https://www.health.gov.au/health-alerts/covid-19/case-numbers-and-statistics
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/214225?page=2
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisaku

 

Profile

著者プロフィール
高尾康端

日本、スイス、シンガポール、アメリカで育ち、2004年からオーストラリアに移住。シドニー大学医学部を卒業。現在は東ブリスベンエリアHawthorne Clinicにて家庭医 (GP)として勤務。家庭医の観点からみる病気についての情報、また母国である日本と移住地オーストラリアの医療システムの違いや、オーストラリアで病気になった時に役立つ情報を発信している。

Twitter:@dryasutakao
Facebook:Dr Yasu Takao
ブログ:https://www.dryasutakao.com.au/blog

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